【コラム】なぜ幼稚園受験をするのか
新年度始動
思い起こせば二十年前、私自身は保護者として全くの未熟者であり、長女の小学校受験の時に初めて世の中にこのような世界があったのか。という驚愕からのスタートでした。
娘は先生にも恵まれ、家庭では「なんだか楽しい」を合言葉に受験にしては健やかに過ごしていたと感じます。むしろ私たち両親に、特に母親の私に、細かなところですと髪の色、メイク、附属園の保護者としての立ち居振る舞い、所謂数々のダメ出しがオブラートに包まれながら先生から出され、企業で長年役員秘書をしていた経歴、価値観など受験の前には何の役にも立たないことを身に染みて感じた時期でもありました。
入学、入園してからも、正しい、正しくない、白黒つかないあいまいなことを受け入れ飲み込み、附属の保護者としての立場を常に考えることが当然とされている文化の中で、自分は小さなものであるという謙虚さを教えて頂いたことは大切なことでした。
季節は猛暑の夏から駆け足で秋が深まって参りました。夏の酷暑を元気一杯に過ごし乗り越えた小さなお友達は体力的にも精神的にも逞しさが増し、見違えるほどのお兄さまお姉さまに成長した姿を見せてくれています。
入会当初は早生まれゆえの幼さから気に入らないとゴミ箱を蹴り飛ばし、物にあたる様子が見られたお子様、初めての場所に深い恐怖心があり、本来は大変朗らかで活発なお子様なのにお気持ちが整わず頑なに拒否反応を示したお子様、途中第三子をご出産し、その間もお父様が通塾を支え休まずにお通いになり見事合格を手にされたお子様、今年度受験生26名お預かりさせて頂きました全てのご家庭にドラマがあり、語り尽くすことはできません。
本当に全員がご立派に歩まれました。
今年で受験講師として13年目の新年度を迎えます。
「よくこんな大変なお仕事を長く続けられますね」と問われることもあります。
合否もあり悔しさと、もっと違うアプローチがあったのではないかという自身への不甲斐なさとで心が締め付けられる思いも毎年致します。それでも、子どもたちから神秘の成長の輝きを見せてもらうたびに、数々の荒波があろうと受験講師の仕事を続ける原動力になっています。
幼稚園受験のメリット
受験者本人に負荷が少なく、附属校の場合小学校受験がないことや、そのまま高校もしくは大学までいけることも大きなメリットと考えます。もちろん附属だからと言って絶対上に上がらなければならないこともなく、一定のルールを順守し柔軟に外部受験も出来ます。娘たちの学園では、中学から高校にかけての段階で、音楽の道を目指し芸大附属や宝塚など、本当に多才な(多彩な?)集団であることに驚かされました。
次女の幼稚園生活を振り返りますと、英語サマーキャンプ、奉仕活動、海、山、体験活動と、豊かな人間力を育むための有効時間であったと感じます。
幼稚園から衣装ケースに入れた亀を風呂敷に包み電車で運び、夏休み中預かりお世話させて頂いたのも良き思い出です。
小学校受験のメリット
長女は教室通いがあり、時に幼稚園の行事と重なり忙しい思いも致しました。常に時間に追われているような気ぜわしさも正直ありましたが、終えてみると小さな手をひき暑い夏を武者修行と称して講習、模試に出向いた二人三脚の日々は、未熟な母に自信と誇りをもたらしてくれた貴重な時間であったと感謝しています。
受験をするから、覚えなくてはいけない季節や行事、昔話や花の名前。図形の回転、系列、積み木の数の数えかた、構成、シーソーの釣り合い。水に浮くとか沈むとか、磁石につく、つかないとか、行動観察、集団製作など大人も舌を巻くほどの素晴らしさに感動することもよくありました。
長女の場合は、入学後低学年のうちは小学校受験の学習で授業理解がまかなえました。それぐらい奥が深い学びだったと感じています。
楽な道とは
幼稚園受験、小学校受験を体験した保護者としてあくまでも個人的な感想ではありますが、ダメ出しばかりの母親でしたので、自分が逆の立場になり先生はさぞや言いづらかったであろうと理解するような有り様で、受験は決して楽な道ではありませんでした。しかしながら、もし再び岐路に立てば「受験をする。」と確信しております。
娘たちは二人共に医療系の大学に進みましたが、どこの大学にいきたい、何の職業になりたいが優先ではありませんでした。常に自分はどのように生きていきたいか、職業ではなく生きざまを考え過ごしていたように感じます。自分はどう生きてゆきたいかをじっくり考える豊かな時間を過ごせたことは、二人の人生において、なにものにも代えがたい恵みの時間であったと思っております。
日々新しく
必ずや相応しい時期と歩みがあり、暗闇に閉ざされた訳では決してなく、むしろ見えている現実より、より良い時期、歩みへの道が示されていることに気がつかない自分がいることがあります。
今までの価値観、今までの自分の殻を脱ぎ捨てることは大人になるほど難しいと感じます。
暗く 長い 土の中の時代があった
星野富弘さんの詩より
いのちがけで芽生えた時もあった
しかし 草は そういった昔を
ひとことも語らず もっとも美しい今だけを見せている
神様が創られた世界は善きもので満たされていることを信じて、恐れず歩みをとめずに新しい一日へ進んでゆきたいと願っています。
幼稚園受験主任講師 佐藤浩子
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