第10回 保護者課題 ~解説~

・そろそろ面接練習が始まります。これまでの保護者課題の取り組みから得られた新しい着眼点を深掘り、面接練習では、ご家庭に示された課題を見事に克服することができるご家庭がいらっしゃる一方、私共の解説をどのように解釈することが適切なのか、戸惑い悩まれるお姿も見えることが通例でございます。

・保護者課題については、マンツーマンでご指導差し上げることが物理的に困難なこともあり、全体への解説という形式を取らせて頂いておりますが、ご不明な点があれば遠慮なくご質問下さって構いません。悔いの残らない形で志望校研究を進め、「ご家庭における教育の在り方(教育方針)」、「ご両親の人生観」 そして「我が家らしさ」 大きなテーマを持って、1日24時間の中でたった30分で結構ですからご夫婦で話し合う時間をお作り下さい。またそれを言語化して下さい。

・お母様に宛てた、「お子さんとご家庭でお約束していることは何ですか。」という質問について。

保護者課題も第10回にもなりますと、学校側の質問意図もおよそ察しがつくようになっていらっしゃるのではないでしょうか。例年では、この時期のご回答においては単にご家庭内での小さなお約束ごとだけに留まらず、また目的を達成した暁の約束(交換条件)といった残念な応答は少なくなる傾向がございます。

・過年度のご回答の一部をご紹介させて頂きますと、“約束事は大小様々にあるけれども、約束を守ることこそが家族の大切な約束なのだ″というものでした。正しくその通りと感じます。
なぜこの約束をするのか、子どもに身近な具体例を伴わせつつ約束をさせる本質部分を理解させること、且つ約束を守ることに大きな意義があることを教え導くことが肝要で、仮に守れなかった時にご家庭としてどのように子どもと向かい合っているのか、ここまで深掘り回答出来るのは、素晴らしい満点回答でした。

・一方、質問の意図を深く捉えられず、深掘りした応答が苦手とお見受けする方も中にはいらっしゃいます。

・毎回エピソードを取り入れた情緒的な子育て記録だけに留まってしまっているのは、率直に申して厳しい選抜のある考査で生き残れません。エピソードを取り入れながらも、ご家庭が大切にしている価値観、お母様の優しくも凛とした人間性が滲み出るフックを応答の中にちりばめられるよう工夫を凝らしてまいりましょう。また、「あるべき論」や「思想」が私立小学校がお求めになる保護者像と真逆を向いて歩いて行ってしまっている回答になっていないか、気をつけて振り返っていただきたく存じます。例えそのような考えをお持ちであっても、質問の意図を汲み取り、学校のお考えに寄せて行くポーズが必要ということです。

・面接考査では、各校5分~7分という限られた時間の中で、お父様に2~3問、お母様に1~2問のご質問があります。用意した文章を暗記することではなく、自らの言葉として一層生き生きと語り、先生方のお心に印象深く残る応答をしたいものです。(もちろん、良い印象として残ることが大切で、強すぎる個性は不要です。)

・例年のこの時期の早期面接でのご様子を拝見しますと、ホームラン回答を出して行くには、まだまだ訓練が必要です。共に言葉を紡ぎ、先生方の心に響く『我が家らしさ』を作り上げてまいりましょう。

・次にお父様に宛てた、「お子さまが友達と良い関係を築くために何か心がけていることは何ですか」という質問について。

お母様への課題同様、お父様方におかれましても今回の課題の趣旨は非常に分かりやすく、お父様ご自身の生き方、生きざま、価値基準が伝わる回答を作成しやすいかと思います。中でも、「友達の良いところを見つけ、違いを認め、互いに高めあってゆくよう、日々言葉がけをしている」でしたり、「自分自身を大切にし、その上で相手の立場で考え思いやりを持つことを日々説いている」といった内容が表れている場合、非常にシンプルですがコミュニケーションの本質であり、素直で実直な良い応答との印象を学校に持っていただくことができます。

・会員の方の中にはミッションスクールを受験(併願含め)される方がいらっしゃることを考慮し、今回はキリスト教的価値観に基づいた切り口でご指南申し上げます。一つの例としてお聞き頂けますと幸いです。

・キリスト教では「隣人愛」を大切に考えますが、ミッションスクールでは小さい頃からこのように教え導かれて行きます。

   ■先ずは自分自身を愛し、大切にしなさい。そして自分と同じように、隣にいる人を愛し大切にしなさい。

・カトリック、プロテスタント、日本聖公会(イギリス国教会からの伝道)と、同じキリスト教でもそれぞれ捉え方や解釈に大きな違いがあることは否めませんが、少なくともミッションスクール(附属幼稚園、附属小学校)においては概ねここが根幹であることは確かです。願書や面接でのキーワードとして大切にメモをしておかれると良いかと存じます。

・今回お父様にお伺いした質問も、ミッションスクールでは立派な「隣人愛」であり、信仰はお持ちでなくとも、根底に流れる心に親和性があることが大切です。

ミッションスクールが最も大切にする聖書教育の中で、今回の質問に紐づく聖書箇所(一節)をご紹介します。

     「喜ぶ人と共に喜び、泣く人と共に泣きなさい。」 (ローマの信徒への手紙 12章15節)

・この一節は、イエス・キリスト12番目の弟子パウロがキリスト教伝道の旅に出かけた地より、ローマの教会にいる信徒へ宛てた手紙に記されていたものです。この一節を読んで、皆さんどのような感想をお持ちになりますか?確かに至極当たり前のことのようにも思えます。

しかしながら、ここで着目頂きたい視点は次のことです。

・人は何か不幸な出来事に遭遇し嘆き悲しんでいる人を見ると、哀れみの心を持ち愛をもって接することができます。(特に日本人はその傾向が強いと言えましょう。)

つまり「泣く人と共に泣ける」生き物なのです。
ところが、「喜ぶ人と共に心の底から喜べる」人はどれだけいるでしょうか。

自分自身がたとえ喜びで満たされていない時でも、隣人の為に祈り、隣人の幸せを心から喜び祝福できる人として生きなさい、というのがこの聖書箇所に記された真実のみことばなのではないでしょうか。ミッションスクールでも日々このように子ども達への心の教育が成されている訳です。

・クリスチャンホームでない限り、キリスト教 及び キリスト教的価値観の根本理解は困難と感じています。

ましてや、受験の為の手段としてキリスト教の理解を図ろうとすることは大きな矛盾も生まれましょうし、学校の先生方にはシスターも牧師もいらして正真正銘の本物な訳ですから、下手に取り繕うことはせず、是非どのような質問が飛んできても、根底に流れる真心にキリストの愛との親和性を持ち続けて頂きたいと願っています。

少なくとも、キリスト教や聖書と聞いてアレルギー反応があるお父様、お母様は相当大きな意識改革が必要です。これがミッションスクールで子を学ばせる親の在り方と言えるでしょう。

以上となります。
引き続き、次回の課題もお願い申し上げます。