第3回 保護者課題 ~解説~

・今回は課題そのものが身近なテーマであり、初回の課題に比べて大上段に構えての評論めいた記述ではなく、ご自身の思いを率直に表現することが容易であったことかと思います。

・その一方で、あまりに理想的な記述内容に偏っている場合には、読み手に「本当かな?」と疑念を抱かせる恐れがありますので注意が必要です。もう少し踏み込んで申しますと、たくさんの願書を読む先生方の立場で見た時に、「素晴らしいですねー(建前はもう聞き飽きた)」となりがちです。端的に回答することは必要でありつつ、良いことばかりではないその裏の側面にも意識を向けていただけると良いかと存じます。子育ての楽しさの裏にある悩み、理想の休日の過ごし方が想定通りにうまくいかないときにどのように関わろうとしているか、といった姿勢に関しても少し触れられていると、印象深い内容になるかと存じます。

・上記の指摘にも関連して、ご両親様共に、「何々をしている時が楽しい」「休日は何々をしている」という事実としての出来事だけでなく、その意図や今後への思いなど、背景となる考えに紙幅を多めに割くようにすることが望ましいです。何をしているかよりも、なぜしているか、の方が大切です。実際のお子さんの姿を表現をすることは大切ですが、記述内容が「子育ての中でこういった出来事があった」というような言わば「出たとこ勝負」のような事柄に終始してしまいますと、ご家庭の教育の方向性ないしご両親の価値観に基づく方向づけが見えにくくなってしまう恐れがあります。意図的な育児、家庭教育を読み手に印象付けるには、書き手であるご両親様のお考えが明確に伝わるように、事実、考え、意図的行動を区別しながら表現するようになさってみてください。

・とは言え、受験を志すご家庭の保護者の方がお書きくださるエピソードは、多くの場合、一つ一つ具体性が伴っていて目に浮かぶものが多いのも事実です。本番の願書を書く時には、字数の制限の中で表現できることが限られますから、今のうちにご家庭の考えと結びつけて表現しやすい話の種をたくさん集めておかれるようになさってください。

・身近なエピソードを挙げて「子の成長の姿を見るのが楽しい」という回答の記述はしばしば見られるものですが、親として子の成長の姿を見るのが楽しいのは誰しも共通する思いと言えます。
 率直な親としての喜びを表現すること自体は悪いことではないものの、親の熱量に反して、受け取る側の印象は「微笑ましいお子さんですね」ということで終わってしまいがちでもあります。
 その時に、より一歩を踏み込んで、以下に例記するような記述を行うことにより、ご家庭らしさを伝えることができると共に子育てや家庭教育に対する姿勢が見えるので良い印象を与えることができます。

⦁ 子を見ると、現時点では***な様子が見える。親としての願いは***である。そこで***といった取り組みを日常の中で心がけている。しかしながら思い通りに進まないこともあるので、そういった時には***により軌道修正を図っている。
⦁ 子どもが楽しんだり意欲をもったりしている様子を喜ぶだけでなく、困難にぶつかった時や葛藤場面にある時に、いかに親として支え成長に導けるかを考えて***のような働きかけ方を心がけている。
⦁ 自分自身が親から受けた***という教えが、自らの人生に***という意義をもたらしている。その教えを受け継ぐとともに、子の様子も鑑みて***ということを伝えていきたい。
⦁ 親としての責任を果たすため***については堅持している。一方で子の姿から***ということを学ぶことも多い。親としても***な姿に成長していきたい。

・また今回も、表現形式についても言及しておきます。文章中の言葉遣いに関して、ら抜き言葉などが気になることがあります。さらに、日常語(「ちゃんと」「ずっと」など)も目につきますので、いわゆる「書き言葉」での表現を心がけるようになさってください。

・第1回の解説でお伝えしましたが、質問に対し、回答の表現が冗長にならないように引き続き、ご注意ください。例えば、質問「「子育てで楽しいと思うことは何ですか。」に対しては、

×「・・・が子育てをしていて楽しいと思うことです。」
○「・・・です。」

のようにシンプルに答えた方が良いです。実際の願書や面接での応答では、端的に答え、限られた字数や時間を有効に活用することが必要です。

・今回で3回目を迎えて、ご回答の精度も上がってきたのではないでしょうか。この調子で、文章化する作業を通じてお考えをおまとめになることが、願書作成の際に必ず役に立つことと存じます。お忙しい中での取り組みでご苦労も多くお有りかとは存じますが、引き続き、本課題につきましては、お時間を確保して励んでいただけますように何卒、宜しくお願い申し上げます。

以上となります。
引き続き、次回の課題もお願い申し上げます。