第4回 保護者課題 ~解説~

保護者課題も今回で第4回目となりました。毎回のご提出、誠にありがとうございます。

以下、解説でございます。

・前回同様、課題そのものが身近なテーマであるので、例年寄せられる回答も、それぞれのご家庭の日常が垣間見られるような優しい内容であることが多いものでございます。学校の先生方は、志願者(ご家庭)がどのようなお子さま(ご家庭)なのか、願書や面接での応答からズバリ日常の様子を想像し合否判断をされる訳です。ですから、いくら美句を並べようともご家庭の様子がまったく見えない、伝わらない願書や面接応答の評価はとても残念なものになってしまうということです。

・お母さまへのご質問「 子育てでうれしかったことはどのようなことですか。」について。

前回、今回と育児に関する質問が続きましたが、育児の喜び、やりがい、といった質問は、どちらの学校でも毎年頻出の定番で、最近は、お父様、お母様それぞれに同じ質問をされる学校も増えました。
(例えば…「今お母様に伺いましたが、お父様はどのようにお考えですか?」といきなりボールが飛んでくるという具合です。)

・多くのお母様のご回答例として、それぞれのエピソードを交えつつ『心の成長が嬉しい』…これは誰も否定が出来ず、良い回答だと感じます。日々育児という尊い役割の多くを担っているお母様なのですから、身を粉にして捧げるご努力の成果として、お子さまの『心が成長して嬉しい』…良いと思います。

・一方で、あまり好ましくない例は以下のようなものです。

『我が子の成長を他者(よそのお子さま)と比べること』『親子で特別な目的を達成できた時』

・特に幼児のお受験を取り巻く環境は異常で、受験を意識し過ぎた競争や受賞歴など、○○が出来たから嬉しい、模擬テストで1位をとったから嬉しいなど、条件付きの称賛、喜びは最も嫌われるパターンとなりますので、過去の例をとって付記致します。

・なお、お子さまを『彼』『彼女』と呼称することについて、自らのお子さまを客観的にご覧になっていることをお相手に印象付けますし、実際ご両親とは異なる人格を持つ『人』として向かい合っていることの表れとも感じますが、幼稚園受験や小学校受験の場面では、不向きかと存じます。願書や面接では伝統に倣い「息子は」、あるいは「娘は」…というようになさると良いでしょう。

・次にお父さまへのご質問 「お仕事や家事でお忙しいと思いますが、お子さんとどのようにコミュニケーションをとっていますか。」について。

・この類いの問いは面接やアンケートという形式においても各校頻出であり、是非ご自分の考えとして秋までに精度を高めて頂きたいと存じます。

・時代は変わり、私立小学校でも働くお母様率は年々増加傾向にあります。(数十年前まで医師以外で働くお母様は希少でした。)
また、コロナ禍を経て働き方も変わる中、リモート環境下で社会復帰を果たされるお母様も更に増えています。
多くの女子伝統校ではジェンダー教育も盛んで、特に女子校の先生方はご家庭内におけるお父様の役割にお母様同様の温度感を求める傾向がありますので、この点はご承知おき下さい。

・心はお母様と同じように…しかしながら物理的にお父様が担って頂きたい役割とは一体どのようなことでしょうか?
訊かれ方は「おこさまとのコミュニケーション」ですから、そのままお応えになってももちろん良いですが、更に上を目指す回答を探した場合にはこんな回答があるかも知れません。

「育児の中でも体力を要する事柄には特に積極的に関わるようにしています。
例えば毎朝子どもたちと隣の駅まで3キロのジョギングをしています。丈夫な身体づくりは父親の役割だと思っています。」ですとか「娘は父と相撲をとることを週末の楽しみにしておりまして…体を張った遊びは父である私の役割だと思っています。」ですとか、お仕事や社会に関するテーマはお父様の役割としてコミュニケーションをとっているというのも示唆に富んだ良い応答かと存じます。

・例えば、農大稲花小学校のご面接では父母のいずれかが、先生方の前で絵本を読み聞かせる課題が与えられ、その後、親子でディスカッションする様子が評価されました。
この数年は絵本選定は自由とされていますが、従来は「しょくぶつ」「やさい」といったテーマが挙げられました。

慶楓会ではこの年の志願者の面接練習でこのようなご指導を差し上げました。
※選んだ本は、福音館書店 【やさい】

お父様発問
『八百屋さんの店先に並んだ大根、どうして葉っぱが綺麗に整えられているのかな?』

お子さま
『おじいちゃんの畑で育った大根はおっきな葉っぱだったよね?』

お父様
『そうだよね!よく覚えていたね~ 畑で収穫された野菜はどこに運ばれるんだっけ?』

お子さま
『市場!』

お父様
『そうだよね、市場に出荷されるときに大根がみんな同じ箱に入るように、葉っぱは短く切って形を整えるんだ』

こんな会話の中に、生産農家から青果市場に運ばれる物流をも取り入れたお父様の導きは、まさしく社会の扉であり面接は大変評価されたようです。

こうして、私立小学校を目指されるご家庭は皆さま揃って経済的にも非常に恵まれたご家庭が多く、同時にお父様(お母様も)が大変お忙しいことは学校側も十分理解されていますが、そのような中でも、奥様、そしてお子さまを大切に考えられるお父様を望んでおられるのです。
加えて、働くお母様の私立小学校入学が認められる社会になりましたが、その中でもご自分の仕事を優先し、お子さまの学校生活や、お子さまの気持ちをないがしろにする親御様は断固として拒否されます。
よく学校説明会で「私共は社会で活躍する女性を育て送り出す役割を担っている、だから働くお母様を応援したい」と仰有いますが、本音と建前が共存する典型的な事案と認識しておくことが肝要です。

以上となります。
引き続き、次回の課題もお願い申し上げます。