第8回 保護者課題 ~解説~

今回もご提出くださり、ありがとうございました。

少しお耳の痛いお話をいたしますが、当保護者課題の提出タイミングについて、振り返ってみていただけますでしょうか。毎回余裕を持ってご提出されているか、その反対に毎回期限ギリギリとなっているか。

例年の傾向では、ご提出のタイミングの順序は、ほぼ固定化されていることをあえてこの場でお伝え申します。
手のかかる課題に取り組んでいただいていることは充分承知しておりますが、毎回提出期限ギリギリでお出しになる方は、入試までの半年間、抜本的な意識改革が必要です。

・小学校受験は甘くはありません。例年の受験を振り返り、結果が奮わなかったご家庭に見える共通項を踏まえ、あえてこの時期に苦言を呈しますことをご理解下さい。また、多かれ少なかれ家庭内の常識の違いに戸惑い、時に苦しみを感じる時にあるようです。

・厳しいことを申しますが、小学校受験をするということは、選抜される立場にあるご両親とお子さまであるということを今一度ご理解いただき、「我が家流」や「うちの子の個性」が独り歩きせぬよう、常に俯瞰するゆとりをお持ち下さい。同時に志望する小学校(先生方)がお望みの「家庭像」「子ども像」を常に意識しましょう。

・さて、今回お母様に宛てた、「お子さんが大切にしているものは何ですか?」については、以前の保護者課題(お子さんの好きな絵本)と同様に、「お子さんがなぜそれを好み、大切にしているのか」を表してくださる方、あるいは「なぜそれを我が子に与えたのか」という親の視点も表現されている方が例年のご回答では多く、こうした回答はご家庭の姿とお母様の価値観、並びにお子さんとの関わりが見えて好ましく感じられます。

・この質問も毎年頻出となり、早稲田実業学校初等部、洗足学園小学校、東洋英和女学院小学部では、同じ質問をお子さんへ問いかけることが多くございます。
ご家庭での導き方一つで所謂「満塁ホームラン回答」が出ますので、ご念頭に置きつつ日々の声がけを丁寧に、言葉を紡いでまいりましょう。

・なお、多くのミッションスクールではキリスト教的価値観に基づき、6年間の小学校生活の中で「命の大切さに気付いてほしい」「神さまが与えて下さった命は皆等しく、どんな小さな命もないがしろにせず大切にしてほしい」という聖書に示されたみことばが教育活動に体現されています。

・ですから「大切なもの」を尋ねられた時、何か特別で高価な物や競争で1番をとることよりも、命(兄弟、姉妹、飼育している動物)として応答出来ることはミッションスクールが喜ばれる回答かと存じます。
もちろん、無宗教校であっても、幼い子どもの価値観に損得勘定があるのは非常に残念なことで、特別で高価な物を大切にするのではなく、深い愛と真心のこもった物であることが望ましいでしょう。

 ・ご家族の深い愛情に守られのびやかに育ったお子さんは基本的信頼関係が既に構築されていて情緒が安定しています。情緒が安定しているお子さんは先生のお話がよく聞け待つことが出来ます。
このように幼い子どもの受験は付け焼き刃では通用せず、全ては乳幼児期から続くご家庭での導き、育みが実を結ぶ時なのです。 まだ遅くありません。日々の生活やお考えを改める必要があるとお感じになった方は今日からすぐに新しくされましょう。

・少し脱線しますが、命の大切さを教える良い絵本がありますのでご紹介します。ストーリーの紹介は割愛しますが(下記URLより概要お読み下さい。)命の大切さ、生活科(社会科)の導入他 たくさんの学びがある絵本です。
今後の課題としてご参考になれば幸いです。

   いのちをいただく(講談社)

・次にお父様への質問「父親の役割はどのようなものだとお考えですか?」についてですが、これまで布石となる課題を随分と共有させて頂きました。それらに真摯に向かい合われた方は、回を重ねる度に改善を重ね、良い応答をお書きになることができたのではないかと存じます。

・実際、過去の入学考査(面接)で父親の役割について尋ねられた学校は、慶楓会の調査だけでも早稲田実業学校初等部、東京農業大学稲花小学校、学習院初等科、聖心女子学院初等科、白百合学園小学校、雙葉小学校、田園調布雙葉小学校、立教女学院小学校と、東西南北 どちらの伝統校でもお父様に尋ねたい事柄の定番質問であることを今一度ご認識頂き、更に上を行く応答を心掛けましょう。

・用意した答案を丸暗記し、一言一句間違えずに応答したとしても、聞き手側に立つと上滑りな印象で 「お父様、丸暗記されましたね…」と見透かされてしまうのが関の山です。繰り返しとなりますが、完璧な応答を追い求めるばかりではなく、お父様にしか語れないエピソードを是非織り交ぜてお話下さい。
例えば過去にこのようなお話をなさったお父様がいらっしゃいました。(※こちらのお父様は自動車設計のお仕事に就いておられました。)ご自身の幼少期に遡り、お父様のお父様(ご祖父様)が見せて下さった背中、ご自身との関わりこそが ″父親の役割″ なのではないかと思い至り、我が子にも同じように実践するようにしている。というものです。

 「私の父は建設会社に勤務し、ビルの設計に携わっていました。当時忙しい中でも時間を見つけては幼かった私や2つ年下の妹となるべく多く関わる時間を作ってくれていたように記憶しています。中でも一番深く心に残っていることは家にある廃材を使って家やビルを建て、公園を作り、鉄道を走らせて街づくりを見せてくれたことです。 父の仕事がたくさんの人の生活を支えていることを幼いながらに知り、モノづくりに魅了されるきっかけとなりました。  (・・・我が子にも、と続きます。)

・ごくごく普通ではあるものの、ご誠実なお父様のお人柄が伝わり、且つ聞く手側が自然と笑顔になるような…多くの方が共感される応答例であると感じます。こちらのご家庭は受験をされたすべての名門小学校に合格をされました。
ご参考までに共有します。

・これまでも繰り返し述べてきたことですが、学校側は教育のプロであり、入学考査という局所的なポイントで申せば何万何千というご家庭をお相手にされている訳です。
上手く話すことよりも、代々脈々と受け継がれている各ご家庭ならではのユニークなエピソードを是非語って頂きたく願っております。また、こちらも繰り返しとなりますが読み手がうんざりしてしまう我が子の自慢話や、小学校受験をするご家庭としては当たり前の日常、日々の営みを、あたかも良い家庭アピールのように饒舌に語られることは、読み手、聞き手側に立つとマイナス評価となります。
あくまでも謙虚に、誠実に、入学を願い出る学校の末席にどうか私共家族を座らせて下さい!という真摯なお姿を学校側にお伝え頂くことを第一にお考え下さい。

・改めまして、入学考査の合否判定でたいへん大きな割合を占めますのが面接考査でございます。
保護者課題につきましては、面接考査で「絶対に入学して欲しくない家庭」という判定がつかぬよう、ご両親様がお子さんの足を引っ張ることがないように、引き続きご準備を重ねていただきたくお願い申し上げます。

以上となります。
引き続き、次回の課題もお願い申し上げます。