【コラム】女子校の行動観察が見ているもの ― お箸の試験は、豆の数を競うものではない

考査の部屋を、ひとつ思い浮かべてください。
幾つかの机が、ほどよい間隔をあけて並んでいます。それぞれの机には、子ども用のお箸と、白いお皿、そして大豆が20粒ほど入った深皿が置かれています。子どもたちは、ひとり一つの机に向かって立っています。
先生からの指示は、短いものです。これからお箸を使って、大豆を深皿から白いお皿に移してください。やめ、と言ったらお箸を置いてください、という、シンプルなものです。
何人かの子は、先生のお話が終わらないうちに、もうお箸へ立ったまま手を伸ばしかけています。
一方で、椅子をていねいに引いて、きちんと座って姿勢を正し、それからお箸へ手を運ぶ子もいます。
2分の時間に、何粒の豆が運べたか。その数字は、評価の中心ではありません。
私学の女子校が、この種の課題で見ようとされているのは、その2分の前後に見て取れる、何でもなさそうな一連の所作のほうです。
申し遅れました。私は幼児教室「慶楓会」で小学校受験コースの主任を務めております、松下と申します。10年あまり私立小学校の教壇に立ち、入学考査にも携わってまいりました。
今日は、女子校を志望なさっているご家庭に向けて、女の子だけの学校における行動観察という試験をどのように受けとめれば良いのか、その勘どころを、私の経験からお話しさせていただきたいと思います。
お箸の試験は、豆の数を競うものではない
考査は、入室した時から始まっている
椅子をていねいに引いて座り直すところから、先生のお話を背すじを保って聞く時間、お箸を取り上げる手つき、指を添える位置。豆を運び終えたあとに「やめ」の声で箸を置く間。それから立ち上がって椅子を机の下にしまい、後ろを振り返らずに自分の待機場所まで戻る数十秒。
豆を移す動作は、この一連の所作の流れの中に組み込まれた、一瞬にすぎません。
先生方は、お箸を扱う活動の間だけでなく、子どもが部屋に入ってきたその時から、退室の扉が閉まる直前まで、その流れの全体を、ていねいに見ておられます。
食卓のお作法の基本
もちろん、お箸の扱い方それ自体も見られないわけではありません。
たとえば、お箸の先を、お皿のふちに、トントンと打ちつけて先を揃え直す子がいます。よその子に先を越されまいと、一粒目を急いで掴みたい、その気持ちが手に出てしまうのでしょう。けれども、その音が机の上に響いた瞬間に、評価はある意味、もう終わってしまっています。
食卓でお箸を皿に打ちつけることが許されないのは、お箸を扱うお作法のいちばん基本です。
もうひとつ。お箸を持ち上げるときに、先のほう、つまり口に運ぶ側を握って取り上げる子がいます。
これも同じです。お箸を正しく持ち上げるとき、指がかかるのは、中央から上の3分の1の部分です。これから自分が口に運ぶことになる先端を、最初から握り込んでしまう様子は、その子の家の中で衛生観念が教えられていないと受け取られてしまう可能性もあるのです。
見られているのは「家庭の文化」
これら二つの点を考えるだけでも、お箸を扱う試験においては、お箸遣いの巧みさというものは、それほど重要ではないことがお分かりいただけると思います。
それよりも、お箸という毎日用いる道具の扱いについて、ご家庭がどれほど意識しているか、ということがうかがえるのです。
それはすなわち、「家庭の文化」が見られているとさえ言えるものです。
女子校の行動観察と、お箸を並べる毎日
行動観察を重んじる女子校
雙葉小学校、田園調布雙葉小学校、横浜雙葉小学校。白百合学園小学校、湘南白百合学園小学校。東洋英和女学院小学部、立教女学院小学校、聖心女子学院初等科、日本女子大学附属豊明小学校、光塩女子学院初等科。
慶楓会にお通いになっている女の子たちのご家庭が目指しておられる志望校のうち、女子校を取り上げれば、おおよそこのあたりに集まります。
ご存じの方も多いかと存じますが、これらの女子校では、ペーパーや個別考査と並んで、行動観察の試験が考査の柱に据えられています。
「うちの子はおとなしくて」というご相談
幼児教室で授業をしていると、授業のあとに、お母様が時折私のところに尋ねていらっしゃることがあります。「うちの子はおとなしくて、お友達の輪に入っていけません。受験で、行動観察の試験は大丈夫でしょうか」。
同じようなお問い合わせをいただいたときには、私はよく、ひとつのお返事を差し上げていました。
たしかにお友達の輪の中に自分から入っていくことも時には大切ですが、それだけが大切なのではありません。周囲をよく見て判断し、自分が今、何をすべき時なのかを判断できるのも大切な力です。ところでお子様は、ご家族の分のお箸を、毎日並べていらっしゃいますか。
行動観察での振る舞いについて質問をしたはずが、急にお箸の話をされて、少しぽかんとされるお母様が、ときどきいらっしゃいました。
お箸を並べることと、行動観察の考査と、そのつながりが見えておられなかったのでしょう。
しかし私は、両者には明確なつながりがあると考えています。
お箸をていねいに並べ、それを正しく扱うことを大切にする暮らしの中に、女子校の行動観察で見られている力の芽が含まれているのです。
より深い内容をお知りになりたい場合はこちらに詳細版を掲載しています。
関連するご案内
年中コースの行動観察クラスは、月曜日13:45〜14:50・水曜日16:15〜17:20・土曜日10:35〜11:40です。年長コースの各クラスもご案内しています。

執筆
慶楓会 小学校受験コース 主任 松下健太
体験授業・ご面談も随時承ります






