【コラム】悩む時間はない

慶楓会 小学校受験コース主任 松下健太です。

11月中旬から12月下旬までは、1年間の中で入塾に関するお問い合わせが比較的多い時期です。いただくお電話口でのお話では、未ださまざまな点で、受験に関して悩んでいるという方が大半です。

はっきり申し上げます。悩んでいる時間はありません。

今年最後のコラムは、皆様の「覚悟」を再確認するものとさせていただきました。

もくじ

悩みは、親の自信のなさの現れ

悩んでいる方は、たいてい、以下のような発言をなさいます。

  • 「我が家のような庶民が、果たして幼稚園受験や小学校受験に参入してもいいのかしら……」
  • 「地方出身で、何の縁故もない我が家に、合格の可能性はあるのかしら……」
  • 「これまでほとんど何もしてこなかったけれど、今から対策をして間に合うのかしら……」

こうした発言の背景には、全て「親の自信のなさ」があります。上記のような言葉には、「どうせコネや縁故で枠は埋まっているんでしょ、うちみたいな庶民がお金や時間をかけても無駄だわ」というような卑屈な精神が見え隠れすることすらあります。

受験しなければ合格は絶対にあり得ないのに、はなから不合格となることを想定して、失敗する可能性が高いのであれば、なるべく避けたい、という恐れが先行しているということです。

「我が家では伸び伸びとした子ども時代を過ごさせたいと考えているので、無理はさせたくない。幼い子どもに過重な負担をかけたくないし、我が子の良いところを見てもらえる学校に縁があればそれで良い」という言葉が続くこともしばしばですが、これらは自分の選択や発言に対する保険であることが多いように思われます。

たとえば「小学校受験で合格に結びつかなければ中学受験」という割り切った考えをお持ちの方は一定数いらっしゃるのですが、そうであっても、やはり試験に臨むからには合格を見据えて取り組むことが真摯な態度かと思われます。見栄や保険のような言い訳を捨てて、やるからには全力でやるぞ、という態度で臨んでこそ、結果が伴ってくるものです。

「絶対に合格を勝ち取る」という強い決意を示すことが、まるであさましい姿であるかのように忌避して、はじめのうち澄ました顔で超然的な姿勢を保とうとする方ほど、受験が近づくにつれて急に焦り出してやたらと個別指導を希望されるといったご様子を、これまで多く拝見してきました。

幼児の受験は甘くありません。10倍率以上を超える学校が多数あり、受験した学校をことごとく不合格となることも珍しくないのです。しかも、教科学習を中心とした学力的要素の比重が高い中学受験以降の受験とは、試験で問われる事柄の性質も大きく異なります。

幼児の受験では、ご家庭がその学校の文化にしっかりと染まった上で、学校の考えと協調して子どもを育てていくことができるかどうかかが厳しく見極められるのです。

出身ということの意味

結論から申すと、いわゆるコネや縁故といわれるもののうち、両親あるいは親のいずれかが出身者である、といった場合のそれは、そうした履歴自体が意味を持つというよりも、親自身が身につけた文化資本が家庭環境に大きな影響を与え、結果として子育てを通じて子どもにも同様の価値観が育まれやすいということの結果論に過ぎないのです。

そして、縁もゆかりもないという方は、そうであるからにはなおさら、その差分を埋めるべき努力を怠らずに励むことが求められるのであって、「うちにはどうせそもそも無理なんだわ」といった消極的で卑屈な諦めを抱いているような猶予は、本来ないはずなのです。

たしかに、「ご出身である」という背景に安穏として受験に対する意識が、傍目には緩やかであるという印象を拭えないという方も中には見えます。しかしながら一方では、ご自身やご親族が出身であるということがかえって重圧としてのしかかり、むしろお子さんを授かる前からさまざまな準備を重ね、その後も0歳から準備を着々と重ねているという方も多くいらっしゃるのです。もちろん、その努力というのは、前回のコラムで触れたように、ペーパーを毎日100枚させるといったことではありません。お子さんの発達段階に即した適切な刺激を継続的に与え続け、その成長を促し続ける意図的な関わりと、ご両親様ご自身が紡ぐ丁寧な暮らしによる感化を指しています。

「ありのまま」の危うさ

こうした(言葉を選ばず表現するならば)いわば死に物狂いの準備を重ねてきているご家庭と並んで試験会場に立った時に、本当に我が子の素質だけを武器にして戦えますか? その学校が大切にしてきた価値観に染まることをせず、むしろそうした価値観を根底から覆して凌駕するほどの魅力をお持ちのご家庭でしょうか? もし自信を持って首を縦に振ることがお出来になるならば、何ら受験を意識しない毎日をお過ごしになられた上で、ありのままで試験当日を迎えられると良いかと思われます。

しかし現実には、そのようなご家庭は稀でしょう。志望校とする学校において堅持されている、丁寧な教育的営みや価値観に並ぶどころか、むしろ対極にあるような振る舞いすら日常に溢れてはいませんか?

  • 「伝統女子校に通わせたい」と考えているのに、ペットボトルをどこでもラッパ飲みさせていませんか?
  • 「活発な共学校に通わせたい」と考えているからと言って、時と場所をわきまえずに大騒ぎを許していませんか?
  • 家庭内であっても、親自身が「やばい」「〜じゃん」といった言葉遣いを多用していませんか?

特殊な道に踏み込む覚悟

ひとつ視野を広く持てば、同世代の99%のお子さんは、私学でもなく、ましてや都心でもない、地方の自然豊かな環境で伸び伸びとした毎日を過ごしています。そう考えれば、ある学校に目標を絞り、その中で独自の価値観を何十年も、場合によっては百年以上も堅持してきた中に加わろうとすることの方が、特殊な道であることに自覚的であり、覚悟を抱くべきと考えます。

しかもその覚悟の結果を負うのは親ではなく、その学校に通うお子様自身です。

また、考査を担当するのは、教育のプロです。メッキはすぐに剥がれ落ち、見透かされます。受験に備えるには、お子さんを内面から本質的に育てていく以外の手立てはないのです。子どもの行動に細かく目を配り、過干渉に陥ることなく絶妙のバランスで導いていくのは確かに骨が折れるかもしれません。まして、親御様自身が異なる価値観に依拠してお育ちになられてきたのであればなおさらです。

もしそこに、何のゆかりもなく、全く異なる文化、価値観を背景として育ってきた両親が、急に我が子を置きたいと考えるのであれば、出身者である人たちの何倍も何十倍も努力をして、寄せていくよう尽力せねばならないことは、当然のことでしょう。

どれだけ強い関係があり、社会的にも経済的にも影響力の大きいご家庭であっても、倍率上は不合格となる人の方が圧倒的に多いのが幼児の受験です。生半可な気持ちで臨むものではありません。それでも、茨の道をかきわけて進んだ先にあるかもしれない光明を目指して進む覚悟があるのであれば、悩んでいる時間はありません。今すぐに行動を始めてください。


小学校受験コース 主任講師 松下健太

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