【コラム】折れない軸

慶楓会 幼稚園受験コース主任講師の佐藤です。

もくじ

心静かに

毎年初夏から秋にかけて、毎週日曜日に親子面接練習に励むご家族様と数か月を過ごすことが恒例となっております私にとりまして、12月は教会への足が遠のいておりましたことをお詫びし、心に静けさを取り戻す(心を入れ替えるともとれます。)大切な季節と感じております。久しぶりのごミサに参列致しましたら、コロナの関係で1か月遅れの七五三の祝福のごミサに預かることが出来ました。未だ続くコロナ禍で、なかなか思うように集えず、また大勢の方の祝福を受けられない子どもたちですが、お一人お一人の表情は真っすぐに神父様を見つめられ、神様、神父様、ご両親様の深い愛の下、静かな満ち足りた表情をされていたのが印象的でした。

慶楓会の卒業生も多い女子難関附属園の前園長様が、「お子様は特別なことが嬉しいのではなく、ただお父様お母様と共にいることが一番嬉しいのです。」と、私どもに教えて下さいましたことを、改めて思い出す日々です。私たち大人が思う以上に小さなお子様たちの心の中には静けさがあり、澄み切った心は水面のようであり、私たち大人以上に神様を身近に感じ、神様の声を聞くことが出来る特別な存在であることを感じる出来事でした。

小さな教師たち

新年度がスタートしたばかりの慶楓会の子どもたちは、毎回の授業に元気一杯なお子様が多い中で、時に「さて、今日のご機嫌は?」とお顔を覗き込み、機嫌が悪いは悪いなりに、最後までやりきることを一番の目標にしております。その為時にはご家庭とは異なる関わりを通して、「先生のお部屋には先生のお約束があるのよ。」とぶれずに、されど怒らず、何度も繰り返し、幼いから分からないと決めつけず、頭ごなしに抑えつけず、幼いなりに感じる心、考える心を育みたいと願っております。

時に泣き止まないお子様に、同じ2歳の他のお子様が、「ママは後からくるよ。」と声をかけたり、1歳の小さなお子様まで、泣いているお姉さんの頭をなでてあげたり、自分が言ってもらって嬉しかったこと、自分がしてもらって嬉しかったことを即実践していく柔軟な素直さに学ばせてもらうばかりです。

誰一人、泣いているお友達を困った人と見ているのではなく、同じお部屋の仲間として、自然に心を分ける姿が本当に愛おしく感じます。

私など、いい年をして一人っ子だったからか、大音量に弱く、心の許容範囲からあふれ出てしまいそうになるのを、押しとどめてくれるのも小さな教師たちです。

育ちって大切?

そんな小さな教師たちですが、本来の年齢相応の無邪気さと理論的でない不透明さに翻弄されつつも、諦めず、毛穴からしみ込むように教え導く日々のなかで、ご両親様の協力は不可欠であると感じています。そのような日々の中で「育ちって将来に必要ですか? 優秀なこと、将来稼げることに、正しく座る。靴をそろえる。はいらないでしょう。」と断言された保護者様もいらっしゃり、私自身も、保育園育ちの一貫校の経験なし、私が学生、社会人のころは、男女雇用機会均等法、勝ち組負け組などという言葉が流行していた時代で、先の保護者様と同様の価値観の中で育ってきたと言っても過言ではないかもしれないと感じております。そのような背景の私が娘たちの子育てを通して、一貫校で15年間保護者として歩ませて頂き、育ちとは、正しく座る。靴をそろえる。のように、自分も周りも整っていると気持ちが良い。という目に見える、ある意味「躾」の部分も大切かとは思いますが、私が思う育ちとは、普段は気が付かず、目にも見えず、されど、必要な時に感じる心、共感する心を育てることであり、自分の自分なりに秀でた能力を惜しみなく他者の為に分かち合える人であり、思いがけない困難に見舞われたときこそ、その人の育ちの真髄が初めて目に見え、困難を受け止める強さと困難に立ち向かう勇気を持てる人となるべく成長していく育ちであると感じております。

小さな教師たちの中に育ちの最初の一歩、大切な決して折れない軸をご両親様と共に育んでいけましたらこの上もない喜びであると心より感謝する日々です。

執筆
幼稚園受験コース 主任講師
佐藤浩子

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