第14回 保護者課題 ~解説~

・今回で14回目となった保護者課題です。

・いよいよ、ご家庭内の様子が伺える温かなご両親像の表現をまとめ上げていく時期です。これまでふわっとしていたご家庭の軸が読み手にしっかりと伝わる表現で言語化できているか、それぞれの方が積み残されていた課題や問題点に関して、解決の方向に進んでいらっしゃるようであれば安心ですが、いまだご不安が多い場合には、早めにご相談ください。さらに会としても、これまで以上に率直なお伝えをもとに、現実的な対策の強化を行っていく時期ですので、過去の受験指導経験を背景にしたご助言を素直にお受け入れいただきたく、お願いいたします。

・さて、お母様に宛てた「子育ての喜びを教えてください。」という質問。こちらも毎年多くの小学校で尋ねられる定番中の定番問題であり、お母様の人間性や人生観を問う良い質問です。シンプルな問いですから、率直に応答することが好ましいでしょう。
ただ、極めて当たり前過ぎる内容、例えば「子どもが健康で毎日笑顔で過ごせていることが喜びです」とか、「子どもの日々の成長(~◯◯ができるようになる)が自らの喜びです」といった応答では高い倍率のつく難関校では埋没して生き残れません。

・また親の盲目的な愛情が独り歩きする応答も避けたいものです。例えば「日々の小さな成長のすべてが愛おしい」、「この世に生まれてきてから毎日が喜びだ」、「希望に満ち溢れた姿をそばで見ているだけで幸せだ」という回答は、お気持ちはよく分かりますが些か注意が必要と感じるものです。我が子への愛情が度を越した形で相手に伝わることのないよう、この手の質問には慎重になりましょう。

・日々子育てをしていると実にたくさんの方々と関わり合いを持ち、支えられ助けられていることに気付かされます。子育てをする中で、自らをも育てて頂いていることに気付き、“あぁ有難いなぁ・・・”とか”嬉しいことだなぁ” と子育てを通じて自らの生き様や価値観が変えられるような出来事に遭遇する場面がございますね。学校がお知りになりたいお母様の人となり、人生観を唯一無二のオリジナリティを持ってお示し下さい。  

・こうしたご質問への応答を拝読(拝聴)すると、「自分が、自分が、」という隠れた主語がお母様の人生観を浮き彫りにしてしまい、全体的な印象を悪くしている方をお見受けすることがあります。繰り返しとなりますが、保護者面接という特別な場面では先ず先生が何をお聞きになりたいのかを第一に考えましょう。

・「自分が、自分が、」という自分本位の考え方、価値観が伝わると評価は厳しいものになるとお考え下さい。
少なくとも、ご自分の応答が広くあまねく共感してもらえる内容か否か、予め第三者(ご家族以外で客観的な意見を求められる方が相応しいです。)にご意見を求めることも良いでしょう。

そのような中、過去の回答より、大変素晴らしい応答の一つを、内容を抜粋してご紹介いたします。

 「さらに、最近は日々の子育て自体にも喜びを感じております。幼稚園の先生方、友人、親戚、ご近所の方等、子育てを通じて、日常で接する多くの方々に助けられ、生かされていることに気づかされ、いまを生きる喜びを感じるとともに感謝しております。 夜寝る前に子どもと一緒に絵本を読む時間、一緒に折り紙をする時間、一緒に外出した際の会話、そういった子どもと過ごす日常の中で新たにされた自分自身とも出会い、喜びへと変えられています。」

・次にお父様への質問  「お子さんは親御様にどのようなところが似てきたと思いますか。」   についてです。

・どういう訳か、昔から子どもは親の悪いところばかり遺伝してしまうと言ったもので、確かに納得してしまう節もありますね。しかしながら、面接考査の場で「娘は私の理屈っぽいところが似ていて…」とか「娘は私に似て慎重過ぎる余り最初から人を信用しない性質で…」と切り出すのは、初めてお会いする先生方へのアピールとしては控えるべきで、あえて悪い印象を与えてはなりません。マイナス面の告白と謙虚であることとは違います。

・以前、東洋英和女学院小学部の面接考査でこのようなやりとりがございました。

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  • 先生からお父様へ「お子さまはおうちで何をして遊んでいますか?」
  • お父様「はい、娘は近頃手芸に大変興味を持っておりまして先日は指だけで器用に編み物をして小さなコースターを作ってプレゼントしてくれました。ビーズを繋いでアクセサリーを作っては妹の首飾りだと喜んでものづくりに没頭している様子です。」
  • 先生「(脳外科医でいらっしゃるお父様の願書をみて) お父様に似て器用なんですね!笑」
  • お父様「笑 そうなのかも知れません…。」

いかがでしょうか。お父様の何気ないお話から伺える謙虚な人となり、ご家庭の文化、知性が伝わる応答ですし、何も特別なことでなくて良いのです。

質問は違えど、学校は先ずお父様の人間性を知りたい訳ですから自慢に陥らないよう注意が必要です。
そして、何を問われても兎に角ご家庭内の温かなご様子をお知りになりたいことを念頭に置き、応答するよう心掛けて下さい。
お子さまをダイヤモンドの原石と例えるならばご家庭はこの原石をどのように捉えて日々研磨しているのか、ここをお知りになりたい訳です。

こちらも、以前の方のご回答より、とても良い内容をお寄せ下さいましたお父様の応答をご紹介させて頂きます。

「娘は私のものづくり好きが似てきたと思います。私は幼少期からブロック遊びが大好きで、大学ではロボットやVRの研究をし、今では街づくりに発展しています。娘は家で大量に取り溜めた空き箱などで、様々な工作物を作っています。大きな段ボールで作ったお気に入りの車に、弟と乗って遊ぶ姿は、昔の自分を見ている様で不思議な感覚を覚えます。数年間、毎週楽しみにして通い続けている、科学実験教室やレゴ教室では、世の中の仕組みやプログラミングを自然に楽しく学んでおります。将来は、ものづくりでも何でも、自分の好きなことで、世の中の人々を幸せにする社会貢献が出来るよう、私たちは見守っていきたいと思います。」

ご家庭ならではの具体性が伴っていて、学校が問いたい本質もよく捉えられていて素晴らしいです。この調子で面接練習(本編)に生かしてまいりましょう。

以上となります。
引き続き、次回の課題もお願い申し上げます。