【コラム】何のための幼児教育か(受験対策の心構え)

慶楓会 小学校受験コース主任 松下健太です。

2023年度入学考査も、私立小学校の考査のピークは過ぎ、現在は国立小学校の考査が大詰めを迎えているところです。そうした中、幼児教室の暦では、早くも2024年度入学考査や、さらにはその翌年の2025年度以降の入学考査を見据えた、新しい年度がスタートしました。これから最後の1年間を過ごす受験学年の方や、2年後以降の入学考査に向けて新たな歩みを開始された皆様に対し、受験の心構えとして「何のための幼児教育か」をお考えいただきたく、今回のコラムをお届けします。

もくじ

何のための幼児教育か

このコラムを読んでくださっている方は、「名門小学校・幼稚園を目指すための幼児教室」である慶楓会のHPを訪れてくださっているのですから、小学校または幼稚園の入学・入園に関する受験対策を考えておられるという点で共通されているでしょう。すでに会員としてお通いの方はもちろんのこと、これから教室を探したい、今まさに教室を探しているという方も、ゆくゆくは受験をされることが、見通しの中におありかと存じます。

では、皆様が幼児教室に通われる理由は、単に受験対策のためでしょうか。世間一般に名を轟かせる名門校の入学だけが目的でしょうか。

いえ、数多くの保護者の方とご面談を重ねてまいりまして、やはりその根底にある思いは「我が子に幸せな人生を歩んでもらいたい」と考える親心ではないかと感じています。確かに、「見栄」や「(親族など)周囲からの重圧」といった、中心的とは言えない事柄が動機の一部を占める方も散見はされますが、突き詰めて考えた時に、我が子の幸福を願う気持ちがないという方はいらっしゃらないでしょう。

これは、裏を返すと、幼児の受験は、お子様自身が選択したのではなく、親御様の選択によって臨む受験ということです。少し厳しい表現を用いますと、「親の勝手」で始めた受験です。お子様は、親の意向に「付き合わされている」と言っても過言ではありません。

そうした心持ちで振り返った時、改めて、何のための幼児教育かを、見つめ直していただきたいと考えます。

幼児の受験に特有の不確定要素や考査形式

幼児の受験は、特有の形式であることは、ご存知の方も多いかと存じます。

中学受験以降で主として採用されている、主に筆記試験による学力を中心とした考査と異なり、個別課題なども組み合わせて測られる知育面のみならず、行動観察や絵画、造形、体操、親子面接といった特有の要素がふんだんにあり、また願書の比重もたいへん大きく、その上、複数の学校を併願できるかどうかは多くの場合、出願してみないとわからないという不確定要素をはらむものです。

さらには当日のコンディションに大きく左右されやすい幼児のポテンシャルを底上げしていくということは、もはや神業をもってしか成し得ないのではないかとさえ思われるかもしれません。

多大なる時間、労力、金銭的負担も伴い、それでも「合否結果」という点においては誰も保証してくれるものではない。こうした茨の道を敢えて歩み、幼児の受験に臨む親御様には、どのような姿勢で取り組むかの良識が問われます。

軍隊方式のスパルタ指導より、子どもの育ち続ける力を養う指導

世の中には、「受験対策」ということに完全に特化し、傍目には軍隊方式とも見えるようなスパルタ指導によって、幼い子どもたちを徹底的に訓練することにより、試験対策を行う幼児教室があると聞きます。そうした受験教室をご覧になった方からは、大学受験予備校のようだ、という感想も聞かれました。また、幼児の受験を就職活動になぞらえる言説さえも耳にすることがあります。

受験戦争とも言われるような競争の勝ち負けだけにこだわり、未だ人格が未成熟な子どもに対して社会人予備軍のような発想での対策を強いる受験教室に対し、違和感を禁じ得ません。

そのような、子どもの発達段階を無視し、形式的な知識や技能の新調だけを目的とするような受験対策を「メッキを貼る」と評し、慶楓会としては一貫して排してきました。

教室運営者側の都合で考えれば、確かに家賃の安い雑居ビルの中で、大人数を一度に集めて合同授業を行うことは(非常に限られた意味においての)教授の効率は良く、保護者の側の金銭的負担も相対的に低減される可能性はあるでしょう。そのようにして集まるご家庭の母数が大きくなればなるほど、自然と合格実績も華々しいものとなり、それをご覧になった方は合格者数に圧倒されて、入塾希望者が殺到するのも頷けます。

もちろん慶楓会でも「名門小学校・幼稚園を目指すための幼児教室」と銘打っている以上、入学考査が行われる学校への入学志すために一定の受験対策が必要であるとは考えています。しかしながらそれは、形式的な受験対策だけに血眼になるような名門校受験至上主義を掲げているわけではございません。

私たちが大切にしているのは、子どもたちが生涯に渡り、主体的に学びに向かい、育ち続ける力を養う指導です。教育の成果を、受験の合否だけに求めるような貧弱な価値観ではなく、その子が人生においていかなる困難に出会ってもしっかりと足を地につけて踏ん張り、時には受け流すしなやかさを備え、また嵐から栄養を受け取り、さらに強く大きく伸びていこうとする姿を培おうと考えています。

キャンプという名の体験活動を通じた、本質の教育

子どもたちの内面を豊かに育てていくには、形式的な知識を問うペーパーや決まりきった構図の絵を何百枚とこなすような、外見を良くする短絡的技能教育ではなく、幼児期ならではの感受性を持って実物に触れ、実感を伴って学びを深めていくことによる、本質的な概念形成の促進が欠かせません。また個人の力を発揮するだけでなく、協働して課題に対処していくための資質・能力が育っていくための学びの機会を設定することが必須であると考えています。

こうした点において、我々が大変重視している教育活動にキャンプがあります。

慶楓会で言うキャンプは、いわゆるテントを張ってカレーを作る、といったような野外体験そのものを目的とする活動ではなく、異年齢の集団における組織的な活動を通じて、身体的、精神的、社会的な成長を促していく、創造的かつ体験的な教育活動です。仲間と一緒に活動する中での役割分担による自己効力感、個人の我儘は通用しない共同生活の中で学ぶ自己抑制、必然性のある課題に力を合わせて取り組む中で身に付く粘り強さなど、教室の外でこそ培われるキーコンピテンシーがふんだんにあります。これらの機会を豊富に設け、子どもが自ら考え、自ら行動する姿に導く教育こそ、我々が考える本質的な教育そのものです。

キャンプに関しては、別のコラムにも詳しく書きましたので、よろしければ下記よりご覧ください。

学校が求めているのは、「受験対策」ではない

10年以上の教員生活における勤務校内外での教員仲間や先輩教員諸氏、さらには幼児教室を運営する身として新たに出会いの機会をいただいた各学校の先生方のいずれに伺っても、受験対策だけをしてきたお子さんに魅力は感じないとおっしゃいます。中には、幼児教室が思い込みで指導する、特有の「受験仕草」を身につけてしまったお子さんに対し、「不自然」という評価を下すと明言される先生もいらっしゃいます。

学校側が求めているのは、年齢相応またはプラスα程度の知的な発達、心身の均衡の取れた発達、安定した情緒、価値を生み出す創造性、仲間と協働する姿勢、学びに対する積極的で主体的な態度、自分の気持ちや他者との関係性に折り合いをつけることのできる自律心、生活技能を中心とした身辺の自立、概念形成を促し内省と対話を可能とする豊かな言語能力など、人格を形成する多様な資質・能力の基盤が育つような豊かな経験に満ちた幼児期を過ごしてきた子どもたちです。

保護者の皆様には、「受験対策」という狭い価値観にとらわれて、「これは〇〇小学校の△△年の過去問です」といった言葉を必死にメモするのではなく、目の前のお子さんの姿をしっかりと見据え、その子が生涯に渡り幸せに歩んでいくための基盤となる経験を、今、備えることができているかどうかに意識を向けていただきたいと思います。

慶楓会では、「受験対策」だけに意識を奪われている親御様に対してはご自身の立脚点を顧みていただくようお伝えしつつ、日々の教育活動においては子どもたちの本質を育てることを今後も大切にし、その通過点である受験の成功をも手にできるようご支援してまいりたいと考えております。

執筆
小学校受験コース 主任講師 松下健太

ミキハウス様より弊社が大切にしている教育の考え方や取り組みについてご紹介いただきましたので、下記の記事よりご覧ください。

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