【コラム】自立への第一歩

もくじ

小さな探検家

0歳児の赤ちゃんは物が掴めるようになると口に持っていき、なめたり触ったりして、そのものを知ろうとします。6ヶ月を過ぎるとお座りができるようになり、見え方が変わると「これは何?」と興味を持ち、ずり這いで進んで行き、手に取って触りたいと思うようになります。やがてハイハイからつかまり立ち、そして歩行へと体全体を動かす全身運動から手や指を使った細かい動き、微細運動まで自分の意思で体を動かすことが楽しくなります。

マリア・モンテッソーリは「子どもは動きながら学ぶ」と言っています。初めて世界を発見した赤ちゃんは自然のプログラムに従い、本能のままに行動します。1歳を過ぎると行動は活発になり、自分の周りにある新しい物を探索し、自然の力に促されて「自立したい」という深い願望を持ち、一生懸命に努力し始めるのです。

では、私たち大人は小さな子どもがベストを尽くして「自分一人でできるようになった」という大きな喜びを味わえるようにするには、どうしたら良いのでしょうか。

手を出し過ぎていない?

保育園で勤務をしている時の話です。子どもたちは外遊びが大好きです。外遊びの時間になると皆喜んで集まって来ます。お散歩に行く時、靴下を履いてから靴を履くのですが、自分で一生懸命靴下を履こうと努力する子、靴下を先生からもらっても何もせず、ぼんやりと先生に履かせてもらうのを待っている子、「できない、やって」とすぐに自分で履くことを諦めた子など、様々な姿が見られます。
自分で履こうと努力をしている子は表情も生き生きとして何でも「自分で!」「する!」と意欲的です。後者のタイプの子は何でも「やって!」と依存し、自らやろうとする気持ちが弱く無気力です。なぜこのような違いが生じるのでしょうか。それは家庭での親の関わり方の違いによります。

子どもが自分でやりたいと思っている時に、大人が先回りをして手出しをし過ぎると、せっかくのできなくても一生懸命やりたいという気持ちを無視していることになります。このような姿が見られたら、まず子どもをよく観察し見守ることが大切です。私は常日頃、子どもたち一人一人をよく見ることを心掛けてきました。

「この子は自分でどこまでできるかな」
「どんなことに今興味を持っているかな」
「どんなところでつまずいているかな」
「どこを手伝ってあげれば良いかしら」
こう考えると心にゆとりが生まれます。日常生活で時間に追われ、忙しい時に待つことが難しい時もありますが、時間に余裕がある時は、大人は手を引っ込めて見守りましょう。こちらが根気強いほど、子どもの成長に寄り添うことができます。

やり方を教えてあげましょう

まだ自分の思った通りに筋肉をコントロールできない子どもは、「やりたい」と思ってもどのようにすればできるか分かりません。
「どうしてできないの?」「こうするのよ、分かった?」等、子どもにマイナスの言葉をかけていないでしょうか。子どもはできないのではなく、「やり方」が分からないのです。ではどのように教えてあげればよいのでしょうか。

大人には簡単にできることでも、随意筋の調整期にいる子どもにとっては難しいことがたくさんあります。モンテッソーリは一連の運動を分析して、ゆっくり、黙って、「して見せる」という方法を発見しました。一見簡単なことのように見えますが、意識して「ゆっくり、はっきり、して見せる」という教え方は、子どものペースや表情をよく見て行わないとできません。「黙って教える」というのは中々難しいことなのです。

動作を分析して、順序立てて黙ってゆっくりして見せると、子どもは真剣な眼差しで私の手元を食い入るように見てくれました。一人でできた時の子どもの満足げな表情を見ると、とても嬉しいものですね。もちろん、子どもが全く反応なく、ゆっくり見せても興味を持ってくれない場合もあります。その時は見せ方が悪かったと反省するか、忍耐強くまた教えるかのどちらかです。
机の拭き方を教える時も、何回も繰り返ししてみせることで、子どもは大人を真似てやがてできるようになります。子どもが間違っても「ダメ!違うよ!」と口を出してしまいがちですが、責めるのではなく「もう一度一緒にやってみましょう」と声をかけ、「間違っても大丈夫」と励ますことがとても大切です。「失敗は友だち」ということを伝えてあげましょう。

幼稚園受験ではどのようにご家庭でしっかりと躾けられているかが問われます。基本的生活習慣を身につけている子どもは、自分のことは自分でやり、先のことも見通しを持って行動ができるようになります。
乳幼児期に最も大切なことは大人がまず日常生活の行動を自分でできるように教えることです。教える時は、失敗しながら上手になっていく過程を、忍耐と愛をもって見守り、励まし続けましょう。

執筆
モンテッソーリコース 講師 石井 希依子

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