【コラム】信じる力

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思い出のAさん

昔昔の生徒さんのなかに、Aさん、というお名前のお嬢様がいらっしゃいました。明るく伸びやかで、お弁当箱にはいつもひまわりのような形をしたトウモロコシが入っており、元気一杯に食していた姿は嬉しい思い出として今でも目に焼き付いています。

朝日は誰にでも公平に照らし、日は必ず昇るという願いが込められたそのお嬢様を思い出すたびに、いよいよコロナ禍もこの春で4年目を迎えようとしていることに、愕然とする思いが致します。

わたしごとで恐縮ですが、コロナ1年目は長女の受験真最中で、センター試験(当時は)の後、情勢の悪化により入試形態が刻々と変わり、面接がなくなり、グループディスカッションがなくなり学科試験のみとなり、その後入試自体が一期のみとなった学部もあり、先が読めない日々の中で、試験が最後まであることを信じて黙々と歩む娘を見つめているしかありませんでした。

長女の学園はキリスト教を軸とした幼稚園から高校までの一貫教育の女子校で、「お祈りしていますね。」と先生方が話されるのを見聞きするたびに、大学受験なのに先生方は祈るだけ?と、愚かにも物足りなさを感じていた母親が、我が子の時には、声をかけることすら憚られるような悲壮感漂う娘をただ見つめ、祈ることしかできない現実を目の当たりにして初めて、先生方も私と同じ真の家族のような気持ちで子どもたちを見ていてくださっていたことに気づかされました。本当に愚かな母親であると常々思います。

親となり、娘たちの目線から通して見える景色は多くの気づきと学びに溢れ、忘れていた自身を振り返る謙虚さを教えてくれます。どんな暗闇にも必ず夜明けがあるように、長女の暗闇も本人は意識していなかったかもしれませんが、家族だけではなく自分を信じてくれている多くの方の存在を感じていたからこそ、黙して歩み続けられたのだと私は感じています。

合格するご家庭は特別なの?

慶楓会では、新年度の歩みが刻々と進み、先月は昨年度合格者のご家庭をお招きし、「新春合格者セミナー」を開催致しました。多数のご参加誠にありがとうございました。ここに改めて御礼申し上げます。

ひな壇に座してらっしゃるお姿を拝見いたしますと、あたかもそこだけは天から光がさしているような錯覚さえ致します。お子様もご両親様もみなやり切った達成感ゆえの晴れ晴れとした本当に良い表情をしておられ、この目に見える景色の何倍もの涙を流した日々があったであろうと思い巡らせます。

母子分離がままならず、他塾では泣き通しで、いったんは受験をあきらめようと考えて最後の砦と慶楓会の門をたたいて下さったご家族様が、以前とは見違えるようにお子様がお教室で楽しかったことをご家庭でお母様や弟さんに教えてくれるようになったために、お子様自身の成長の神秘に気づき、先生の話されることは全て実践しようと両親の決心がつき歩んでこられたこと。

早生まれで理解が伝わらず空回りばかりで、娘の良い表情を忘れてしまい、母親自身も何度も病に倒れながらも、週2回の通塾を通じて気持ちにゆとりができ、両親のすべきことを整理する中で、心が落ちつき、子どもと過ごす時間が愛おしく楽しいものに変わったこと。

3年保育で燃え尽き症候群にかかったかと感じるくらいの絶望感の中で、先生に出会えたことで全く違う景色が見え、今までの価値観と異なるものを両親で受け入れていく覚悟がつき、娘の育むべき軸に気づけ、「勝っても負けても笑顔でね。」という先生の合言葉が我が家の合言葉に変わったこと。

どのご家庭も決して特別な縁故や家柄や学歴など目に見えるものだけにとらわれず、目標は志望園合格には間違いありませんが、そこまでの歩みはそれぞれのご家庭の育ちの真髄、本質をお子様の中に育むものであったと感じます。

親の覚悟

そして共通して言えるのは、お子様自身の自尊心を大切に育み、見守り、耐えた先の喜びを待つ努力を黙して実行されてきたご両親様の親としての覚悟にほかなりません。育ちの本質を育むためには喜びばかりではなく、辛い厳しさの方が多いと感じるかもしれません。お子様が「行きたくない。」「ママ。」と叫んで泣く、親なら誰しもが一度は必ずや経験しているのではないでしょうか。その困苦の時にこそ微笑みを浮かべて、ポジティブな言葉がけをし、折れずに一歩を踏み出せるかが、些細な日常の一コマのようですが非常に大切な分岐点です。

「どのような時に子育ての難しさを感じますか。」
「お子様を叱るのはどんな時ですか。」
「我慢が足りないお子様が増えていると感じますが、ご家庭ではどのように我慢の心を育んでいますか。」

各幼稚園の親子面接過去問です。おのずと幼稚園側の意図が、どのようなお子様、保護者様が欲しいのかわかるのではないでしょうか。

受験は、10人いれば10通り、100人いれば100通りの正解があると私は思っております。型にはめるのではなく、一人一人のご家庭の一番の道を探す同志、家族ともとれる慶楓会だからこその歩みを見失わずに大切に進んでまいりたいと願っております。

執筆
幼稚園受験主任講師 佐藤

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