【コラム】未来を切り拓く、年中からの受験準備
慶楓会 小学校受験コース主任 松下健太です。
受験生にとって、夏は天王山。この夏の過ごし方が秋の考査を大きく左右します。小学校受験コースの年長児たちも、これまでの学習が高い水準で結実しつつある様子で、頼もしく思っています。
そうしたなかで、現在年中の子どもたちにとっても、実はこの夏の過ごし方は大変重要です。というのも、幼稚園や保育園における学齢は3月から4月にかけて切り替わる一方で、受験を念頭に置いた場合は11月には「新年長」に”進級”することもあり、実質的な受験準備の期間が残り1年弱という間近に迫ったものとなるためです。
実際に年長に上がってからでは、まとまった時間を確保することがなかなか難しく、年中の時期から早め早めの対策をしていくことが、受験で成功を収めるために非常に重要です。とはいえそれは、闇雲に先取りをして難しい問題に取り組ませることが良いという意味ではありません。子どもの発達段階に即して、適切な刺激を適切なタイミングで与えていくことが、子どもたちの成長を促進していくということです。
今回のコラムでは、年中、あるいはそれ以前のタイミングから受験準備を進めることに関して、どのような意義があるのかをご説明してまいります。
年中からの受験準備:なぜ今から始めるべきなのか?
受験準備を早期に始めることは、年中児にとって未来への扉を開く重要なスタートラインです。早期に受験準備を開始することにはいくつかのメリットがあります。
第一に、時間的な余裕が挙げられます。年中児のうちは、差し迫った受験に関して、まだそこまで意識することなく、目の前の学習への好奇心や意欲をもとにして、柔軟な学習能力を発揮することができます。この時期に受験準備を始めることで、学習の基礎をしっかりと築くことができます。
第二に、将来の学力向上の加速につながります。年中の時期は脳の発達が著しく、学習環境や経験によって脳の回路が次々に形成されていきます。いちど学んだことも、繰り返し習熟の機会を重ねることによって神経回路が強固になり、年長に進学してから学ぶ知識やスキルの習得において優位に立つことができます。また、学習への積極的な姿勢や学習習慣を早期に身につけることで、将来の学習への意欲と自己管理能力を高めることができます。
第三に、将来の学びにおいて自信を持つための基盤を築く重要な経験を積むことができます。一定の目標を親子で設定し、その達成に向けて努力を重ねることで、子どもたちは自己肯定感を高めることができます。自己肯定感が育つことで、学ぶことそれ自体へのモチベーションを向上させ、学ぶことの喜びを感じられる基盤を築くことができます。また、受験準備のプロセスでの自己成長や達成感は、将来の挑戦に対して自信を持つための貴重な経験となります。
早期の受験準備は、未来の可能性を広げるための重要なステップです。時間的な余裕が、学力や自己肯定感の向上を促し、将来に向けての基盤を築くのです。強固な学びの基盤が、11月からの新年長の時期における自信をした支えしてくれます。
知識・スキルの積み重ね:将来の学習力を高めるために
子どもたちの学習を早期に始めることで、繰り返し習熟する機会を保護者の方が意図的に設けることができます。小学校受験において必要とされる程度の知識やスキルは一朝一夕に身につくものではなく、概念の獲得が具体的な経験と結びつくことや、反復的な練習による習熟を通じて、子ども達が表面的ではない深い理解を図っていくことが大切です。
まず、知識の積み重ねについて考えましょう。年中児のうちは、興味や好奇心が旺盛であり、新たな知識を吸収する能力が高い時期です。受験準備を通じて、言語能力、数や図形の処理、身の回りの社会事象や自然現象などの基礎的な知識を習得することができます。これにより、将来の学習において必要な基礎が整います。例えば、お話を聞き取る力や人にものを伝える力、数を増やしたり減らしたりする操作、図形を組み合わせたり分割したりする力、身の回りの事物を詳しく観察する力を高めることで、幅広い対象に対する理解力を深めることができます。なお、学習指導要領で掲げられている「知識・技能」に関しても、知識は理解を伴うもの、という解説が付されています。こうした意味においても表面的な知識にとどまるのではなく、子どもたちが具体的なイメージを伴う理解を深めていくことが必要であると言えます。
また、スキルの積み重ねも重要です。年中児期から運動や絵画、制作といった課題に計画的かつ体系的に取り組むことにより、偏りのないスキルを身につけていくことができます。好きなことだけをするといった、場当たり的な取り組み方ではなく、幼児期に発達させておくべき能力をバランスよく養うことで、将来の学習における大きなアドバンテージを得ることができます。また、規則正しい生活や学習習慣の確立といった、生活に必要なスキルを身につけることも大切です。日々の生活を通じて時間の意識を持たせ、秩序だった毎日の中で集中力を高めていく習慣を養うことができます。さらに、学習の取り組み方自体を工夫していくことで、問題解決力や論理的思考力を養うこともできます。これらのスキルは、将来にわたり、自立心を育成し、身近な課題の解決を目指してみずから物事に取り組んでいく姿勢を養うことにもつながります。
年中児からの受験準備は、知識や学習スキルの積み重ねを通じて将来にわたり学び続ける力を高めるための重要な機会です。単に表面的な知識を身につけ、その場限りのスキルを高めるといった近視眼的な対策ににとどまらない、汎用的な力の基盤の形成を図る時期として、成長過程の中でも大変重要な位置を占めています。
自己肯定感と成長の実感:受験準備がもたらすメンタルの成長
一定数の方が、幼児の受験に対して否定的な印象をお持ちであるようです。それは、幼少期に子どもたちを「勉強漬け」にしてスポイルしては仕方がないというお考えと一体となっているようです。
実のところはスポイルどころか、受験準備を通じて子どもたちは自己肯定感を育み、自己成長の機会を得ることができます。
子どもたちは目標を持ち、努力を重ねて学習を進めることで、自分自身の成長を実感することができます。例えば、少し難しい課題に取り組んだり、苦手な物事を克服したりする過程で、自分の成果を実感することができます。これにより、自己肯定感が高まり、自信を持って学習に取り組むことができます。そしてその際に何より大切なことは、保護者の方が愛情を持って子どもたちの努力を見守り、その道のりを励まして、成長を一緒に喜んであげることです。
さらに、子どもたちは自己の成長を実感する機会を得ることができます。学習を重ねていくと、はじめは理解できなかった内容が徐々に理解できるようになったり、得意ではなかった物事が少しずつ克服できるようになったりすることがあります。そして、学習や挑戦を通じて成果を上げることで、昨日までと違う自分を発見します。さらに、色々なことがわかったり出来たりする喜びを実感する中で、自己成長を遂げ、しかも成長した自分を実感することができます。このような自己成長の過程は、子どもたちの自己信頼心を高め、将来のさまざまな挑戦に積極的に取り組む姿勢を育む助けとなります。
受験準備の過程で得られる自己肯定感や自己成長の実感は、年中児の心の成長を促す重要な要素です。自己肯定感を持ち、自己成長の喜びを体験することで、将来のさまざまな困難にも立ち向かう勇気と自信を持つことができます。
多様な学習経験:未来の可能性を広げるために
受験準備を早い時期に始めることで、年中児は豊富な時間や機会を生かして多様な学習経験を積むことができます。
受験準備を通じて年中児はさまざまな事物に触れたり、自分にとって目新しい体験の機会を得ることになります。こうした機会の意義を意識することで、机の前に座って鉛筆を握って行う学習のみならず、心身や感受性を用いて体験的に学ぶことに前向きになり、よりいっそう豊かな時を過ごしていくことができます。また直接体験を通じた学びにより、幅広い知識を身につけることができるとともに、仲間と考えを交流し合い、意見を交わし合う中でコミュニケーション能力や表現力を伸ばすことができます。このような多様な学習経験は、将来の志望校選択や興味に対して柔軟な選択肢を得られる基盤を築くことにつながります。
こうした豊かな学習経験を通じて、子どもたちは自己の興味や得意分野を見つけることもできます。幼い子どもたちにとっては身の回りの事物の全てが学びの対象と言っても過言ではなく、さまざまな学習対象に触れる中で、自分が好きなものや得意なことに出会う場合があります。これにより、将来において幅広い選択肢や学習の方向性を見出す手助けとなります。自分の興味や得意分野に向かって深く学習することで、自らの関心に従い深い学びを追究していく姿を養ったり、自身の強みを活かしてお友達と関わったりすることができるような姿を養うことができます。
したがって、多様な学習経験を積むことは、子どもたちの未来の可能性を広げるための重要な要素です。幅広くて深い、しかも具体的な知識やスキルを身につけることで、将来のさまざまな選択肢に対応できる柔軟性を持つことができます。
早い段階での受験準備は未来を切り拓くための第一歩
受験準備を通じて成長を遂げることは、年中児あるいはそれよりも小さい子どもたちにとって大きな喜びとなります。目標を設定し、努力を重ねて学習を進める中で得られる達成感や自己成長の実感は、自己肯定感や自信を高めることにつながります。また、受験準備のプロセスでの挑戦や困難に立ち向かう経験は、将来のさまざまな困難にも対応できる強さや粘り強さを育む助けとなります。
将来への展望を持つことは、ご家庭が一丸となって取り組む受験準備においては、重要な要素です。将来の学びや進路に対して目標を持ち、意欲的に学習に取り組むことは、自己の成長や将来における目標の達成につながるものです。また、将来への展望を持ち、自己の興味や目指す方向性に沿った学習を進めていくことで、未来を切り拓くための第一歩を踏み出すことができます。
小学校受験をしようか迷っている方や、受験はするにしても志望校がまだ定まりきっていないという方も、子どもたちが多くの選択肢を持って可能性を広げていくことができるよう、そしてそのための基盤を養うタイミングを逸しないよう、今できることを着実に積み重ねておくことをお勧めします。
伴う行動を日常に据えていただきたいと願っております。
小学校受験コース 主任講師 松下健太
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