【コラム】考査に向けた心構え(小学校受験編)

慶楓会 小学校受験コース担当講師 吉岡未来です。

いよいよ受験本番が迫り、既に出願を完了しているご家庭もおありかと存じます。
慶楓会では、会員様を対象とした「願書添削」と「面接練習」が佳境を迎えており、来月にはこれまでの総まとめである「直前講習」も控えております。

受験を控えたご家庭にとって、ここから考査当日までの過ごし方は大変重要です。
これまで数々の授業を受講し、親子共に様々な教育的努力をなされてきた一方で、考査では僅かな時間しかお子様を見てもらえないために、その成長ぶりや魅力が学校側に伝わらないまま終わることも十分考えられます。

そこで今回のコラムでは、当日の考査に向けた心構えについて、小学校受験コースの立場からお伝えしたいと思います。

「印象」が合否を左右する

学校は、ペーパー試験や巧緻性、体操、行動観察など複数の試験内容を組み合わせて総合的な評価がなされる入試制度を採る中で、考査では学校生活における「学びの姿勢」を判断の基盤としていることから、知能や身体能力のみならず、「印象」や「雰囲気」を含むお子様の姿がそのまま評価対象となります。
待機室での態度や姿勢も時には見られており、試験中は表情や仕草まで細部にわたって観察され、各学校の教育方針に則った集団的な学びが可能な人物であるか否かを判断されます。そのため、たとえ指示通りの動きが出来ていたとしても、説明中に目が合わない子、じっとできず身体の一部を動かす子、表情に覇気がない子などは、学ぶ力が無く集中力の維持が困難とみなされ、合格を逃す可能性が高まります。

残念ながら、普段の授業においても、そのように集中力を欠いたご様子は少なからず見受けられます。授業であれば、講師から注意を受けてその場で正すことが可能ですが、考査ではそれは叶いません。ましてや、表情や仕草などは、よほど意識を集中しない限り品位を保ち続けることが困難であり、良くも悪くも子ども本来の人間性が表れる貴重な情報源と言えます。限られた時間の中、数百人の受験生を見て合否を判断する学校側にとって、先に挙げたような行為が目に付けば、悪い評価は免れません。

しかしながら、考査において特に求められる「動かずに待つ」という行為は、周囲の刺激に敏感な幼児期には非常に困難な課題となります。身体を動かしたい衝動を堪えて完全に静粛を守り、尚且つ試験官の指示を聞き洩らさないよう注意力を働かせる時、子どもには厳しい継続的な「抑制」が求められます。これを突然、慣れない環境で強いられた場合、子どもの心身に負荷がかかり、本来の力が発揮できなくなることも十分考えられます。

したがって、どのような場面においても覇気のある表情や正しい姿勢を保ち続けるには、日々の生活の中で「抑制の精神」を働かせることが重要となります。「抑制の精神」とは、他者から強制的に抑え込まれるのではなく、自らの衝動を抑えた主体的な活動の下に成立する、いわば「自律性」を意味しています。親や周囲の大人に従うだけの、己の意志を持たない受動的な活動ではなく、己を律し「抑制の精神」を働かせた自発的な活動の積み重ねこそが、小学校で求められる「学びの姿勢」の習得へと繋がっていくのです。
具体的に言えば、まだ遊びたい気持ちを堪えて素早く帰りの支度を整えたり、食器を割らないよう細心の注意を払いながら洗い物を手伝ったり、子ども同士のやり取りの中で起こった揉め事に対して、大人に頼ることなく自分たちで思考し解決の糸口を探ったりするその過程を指します。このような日常における些細な出来事の中で、子どもは「抑制の精神」を働かせ、自身の心と体を発達させていきます。

こうして、幼少期より親から独立(自立)している子どもは、じっとしていることは勿論、他者への「印象」や「雰囲気」に繋がる表情・仕草・姿勢からして、同年齢の子どもとは一味違ってきます。 受験対策のみを掲げ、一夜漬けの如く表面上の姿で取り繕うのではなく、常に自分で考え行動する自立した生活環境を整えることによって、覇気のある表情や正しい姿勢が自然と滲み出る人間性そのものを築くことが大切です。そうして、就学前に「自立」の芽を育み、「自ら学ぶ力」を蓄えたお子様こそが、次なるステップである初等教育へと進み、社会という広い土地に聳え立つ一本の木へと成長していくのです。

行動観察に表れる「人間性」

初等教育は、紙上での単なる知識の習得を目的としておらず、集団生活を通じた協調性の育成と個性の伸長、実社会に結び付けた実践的な学びを豊かな教育として掲げています。したがって、難しいペーパーの問題が解ける子や、縄跳びを100回跳べる子が合格するというわけではないことは、ご理解いただけるかと存じます。

そのような教育目的に即して定められた試験科目が、行動観察です。行動観察では、文字通り集団活動を通じたお子様の言動から定性的な情報を収集し、入学後の学校生活に適した人間性を備えているか否かを判断します。そのため、身体能力よりも、周囲との協働を基にお子様の人間性が測られる場となります。故に、あえて受験生を楽しませるような試験内容を取り入れることで、子どもの緊張をほぐし素の能力を引き出すと共に、受験対策の皮を剥いだ本来の姿を引き出そうとする学校は多々あります。それにより、楽しさ故に緊張感を失い、考査開始前とはまるで別人のように大声をあげてはしゃぐ受験生もしばしば見られます。当然、このような姿は全て評価対象となります。

また、受験生の中には、受験対策を目的として定めた教育を施されたが故に、考査の中で先生方の顔色を伺いながら、不自然な様子で他の受験生と関わろうとする子もいます。そのような違和感のある言動は、決して良い評価を得ません。考査において、悪目立ちすることはご法度です。良い評価を得ようと幼児らしからぬ言動をとるよりも、指示されたことを律儀且つ正確にこなし、これまでの経験によって培われた人間性や常識を体現することが大切です。

こうしたことから、受験とはあくまで人生の通過点であり、真の目的はその先にある子どもの幸せ、つまりその過程における豊かな人間性と「生きる力」の習得であるということを、今一度再確認していただきたいと存じます。そうした目的のために、お子様がこの世に生を享けて10年と満たない貴重な時間の中で、数々の教育機関や授業へと足を運び、老若男女問わず多くの人々と関わる環境を整え、他分野にわたる実体験の場を設けているのであり、それが結果として受験対策に繋がっているにすぎないのです。
慶楓会が表面的な取り繕いによる指導を排し、お子様が社会という荒波を生き抜き豊かな人生を歩むための本質的な成長を支える指導を掲げることには、このような意味があります。 行動観察とは、そうした教育環境から培った人間性を表現する場であるということを再認識していただいた上で、今一度お子様の豊かな経験に目を向けた教育を施して頂きたいと思います。

面接と願書には「エピソード」を

面接は、ご家庭の姿を総合的に評価する場であり、学校とご家庭とが共に歩んでいくことができるか否かを判断する重要な場です。ご両親の職業や経歴に関わらず、あくまで学校に入学を願い出る立場として謙虚に学ぼうとする姿勢が見えなければ、学校からは受け入れを拒まれます。したがって、志望理由等の基本的な質問事項を述べられる中で、ご両親の教育に対するお考えと学校の方針にずれが生じていたり、尊大な様子が透けて見えたりすれば、合格を逃すことは十分考えられます。学校や先生方への敬意を払い、家庭としてのあり方や教育観を明確にすると同時に、気品を保ち爽やかに考えを述べることを通じて、学校への協力を惜しまず共に歩む姿勢を示していただきたいと存じます。

それに伴い、面接では必ずご家庭で取り組まれている教育や、お子様とのエピソードについて尋ねられる場面があります。日頃から教育の目的を定め、お子様の様子を観察されていないご家庭は、そのような時に表面的なお話しかできず、我が子への教育に対する不誠実な姿勢が見透かされてしまいます。
学校側ではなく家庭側の教育者として、いかに忙しい日々の中でもお子様と正面から向き合い、夫婦で手を取り合って教育に携わることが大前提です。受験対策という狭い枠組みで事前に取り繕ったご家庭像ではなく、子どもの健やかな成長を願う親の真摯な態度、そして学校と共に歩ませていただこうとする謙虚な姿勢の発露として、面接に対しても前向きに臨む心構えを備えていただきたいと願っております。

また、周知の通り、小学校受験では面接がない学校も幾つか存在しています。その筆頭には、慶應義塾幼稚舎及び横浜初等部があります。しかしながら、両校とも面接を軽視しているわけではなく、全ての学校段階における入学試験の制度において面接重視の姿勢を押し出していることから、面接に相当する評価がむしろ重要視されていることをご理解いただければと存じます。

そのような面接に代わる評価対象の一つには、相当分量の文字数を必要とされる願書の提出があります。学校側は、全ての願書を一言一句お読みになられていることから、誤字脱字などの基本的な部分で選考から漏れる結果も十分考えられます。
加えて、志願者による数多くの願書の中で先生方の目に留まるものに仕上げるには、やはりご家庭で取り組まれている教育活動を反映したエピソードの提示が必須となります。面接と願書、どちらも各ご家庭で積み重ねてきた教育が表面化される場であることを自覚した上で、その前提としてお子様との愛情溢れる温かい日常を築いていただきたいと思います。

もう一つは、試験時間を通じたお子様への質問です。絵画や造形の課題に取り組みながら、作品に付随あるいはそこから発展した私生活に関する質問への応答が求められるために、子どもは複数のことを同時にこなさなければならず、通常の面接よりもむしろ難易度は高いと言えます。そうした質問への応答、態度、総合的な様子が全て評価の対象となり、合否判定に直結する重要な要素となります。
したがって、考査では事前に暗記した内容の再生ではなく、個性が表現される応答や態度を含みつつ、質問を理解し思考を言語化する基本的なコミュニケーション能力が求められます。日頃から、ご家族は勿論のこと、他者との対話を通じて論理的思考力とそれを表現する対人能力の習得が、合否を大きく左右すると言えるでしょう。

「日常」を大切に

こうした考査への留意点を通じて見えてくるのは、いかに日常が大切かということです。先に述べた通り、受験とは本番に向けて「対策」するものではなく、お子様がより良い豊かな人生を歩むための「生きる力」を育成する教育課程の一つに過ぎません。受験本番が迫るご家庭も、数年後に控えるご家庭も、今一度そのことを胸に刻み込み、ご家庭で取り組まれている教育と考え方について今一度振り返って頂ければと存じます。

慶楓会で共に歩んでいただくご家庭には、是非とも豊かな学びのあり方について深く考えていただき、私共にお子様が幸せな人生を歩むためのお手伝いをさせていただきたいと願っております。

執筆
慶楓会 小学校受験コース担当講師 吉岡未来

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