【コラム】願書作成のポイント 知っておきたい成功のコツと避けるべきNG例

こんにちは、慶楓会 小学校受験コース主任の松下健太です。

小学校受験の説明会もピークを迎え、受験を控えた多くのご家庭の中には願書作成に向けて、焦りを覚え始めている方もおありかもしれません。もちろんこれまで、着実に準備を積み重ねていらっしゃった方は、すでに方向性もある程度見えており、安心して草稿を仕上げていらっしゃるかとは存じます。

しかし、例年の皆様のご様子を拝見する限り、出願間際まで文章を組み立てられない方も多く見受けられます。そこで今回は、願書作成における重要なポイントについてお話しし、特に避けるべきNG例についても触れていきます。

絶対に合格を掴み取りたいというお考えのご家庭にとっては、必ず押さえておいていただきたいポイントとなりますので、ぜひ参考にしていただければ幸いです。

もくじ

形式面の基本

願書は、見た目も非常に重要です。書かれた内容がいかに素晴らしくても、見た目が整っていないと、その価値が半減してしまいます。読みやすい字で書かれているかどうかは、印象を大きく左右します。特に楷書を用い、誤字脱字がないか念入りに確認しましょう。願書が乱雑な字で書かれていると、注意力や誠意に欠けると見なされることがあります。

楷書を使うことは、丁寧さや真摯な姿勢を示すうえで非常に重要です。丁寧に書くことで、学校に対する敬意や入学を真剣に願っている気持ちが伝わります。また、誤字脱字があると、細部まで気を配っていないという印象を与えかねません。誤字脱字を避けるためには、複数回の見直しや第三者によるチェックが効果的です。家族や友人、さらには教室の先生といった専門家に見てもらい、誤字脱字がないか確認してもらいましょう。

さらに、文章は簡潔で明確な表現を心がけましょう。複雑な表現や専門用語、ビジネス用語は避け、分かりやすい言葉で書くことが大切です。読み手が学校の先生であるということを前提に、何百枚もの願書をお読みになる先生方が、スムーズに文章を読み進め、内容を理解していただけるように留意しましょう。

その際には、必要に応じて段落や改行などを組み入れながら、願書として適切な文章の構成を心がけることが重要です。論理的であれば良いとも限らず、出願する学校の特性に合わせて、時には情緒的な表現を用いることも必要です。共通して言えることは、長すぎる文章や複雑な言い回しは避け、その学校に適した伝わりやすい表現を心掛けましょう。

内容面の基本

願書には、学校の教育理念に合った内容を書きます。最低限、学校の公式ウェブサイトやパンフレットの情報はすみずみまでくまなく目を通し、理念を把握しましょう。また出身でない場合には関係者との繋がりを求め、その方からお話を聞くなどして、労を惜しまず手を尽くすことが必要です。そうした地道で真摯な積み重ねを通じて、学校ごとに異なる教育方針や理念を理解し、それに沿った内容を記載することで、学校側に「この家庭は我々の教育方針を理解している」という印象を与えることができます。

特にミッションスクールの場合は、キリスト教の価値観を理解し、家庭でどのように実践しているかを書くことが重要です。具体的には、教会に通う習慣や家庭内での宗教教育、信仰に基づく生活のエピソードなどを記載すると良いでしょう。例えば、

「家族で○○教会に通い、神さまの教えを学んでいます。娘/息子も夜にはお祈りを捧げてから眠りにつくことが習慣付いています」

といった具体例を挙げると良いです。

また、家庭の教育方針や価値観を具体的に示し、なぜその学校を志望するのか、具体的な理由を明確に書きましょう。上記のミッションスクールの例に限らず、例えば共学校では「子どもに自主性を持たせるための取り組み」、「本人の意欲を伸長するために重点を置いている事項」など、具体的に書くことが大切です。

ただしその際には、「貴校の教育方針が家庭の価値観と一致している」といったような、家庭の価値観が先立つような尊大な姿勢は絶対に避けてください。あくまで家庭の教育方針を明確にしつつも、子の成長を最も促すためには、志望校の教育こそ欠くべからざる鍵であるという謙虚な姿勢が必要です。またそのようなことを述べる場合には、家庭の考え方や本人の性質を示す具体的なエピソードを併せて述べることで、説得力が増します。

さらに、子どもの性格や得意分野、興味を具体的なエピソードと共に紹介し、過去の活動や成果を記載します。特にミッションスクールではキリスト教関連の経験を取り上げるなど、志望校で重視される活動があれば強調しましょう。例えば、

「家族で教会のバザー運営の奉仕に臨んだ際にも、娘は自分にもできる役割を見つけ、最後まで果たそうとする意志を固く示しました。この経験は、自らの力を他の方の為にお捧げする尊い意義を、胸の内に深める機会となりました」

といった、家庭で大切にする価値観が透けて見えるようなものが望ましいです。

親の姿勢と学校への配慮

願書の基本的な方向性としては、学校の教育活動への協力姿勢や、学校と家庭が連携して子どもを育てる意欲を伝えましょう。例えば、

「母の会・父の会の活動に参加させていただくことは最大の喜びです。○○については業務を通じて培った知見を有しており、微力ながらも学校運営の一助に用いていただけますと幸いに存じます。」

と記載することで、学校側に謙虚で協力的な姿勢を示すと共に、学校への貢献を具体的に訴えることができます。

繰り返し強調しますが、入学を願い出る立場として、謙虚な態度を示すことは重要です。直接的な助力の申し出だけでなく、「御校の教育方針に敬意を抱き、家庭でもその理念を実践していく努力をしたい」という姿勢が伝わる記述を行うことで、謙虚で真摯な姿勢を伝えることが大切です。

先にも述べたように願書はビジネス文書ではないため、先生方が理解しやすいように、教育的な価値観に沿った表現を心がけましょう。一見不合理に見えることにも、教育的な価値があるかもしれないと理解し、それを尊重する姿勢が大切です。また、評論家のような文章ではなく、入学を願い出る意識を大切にし、学校について知ったかぶりをせず、正確な情報を基に書くことが重要です。また、家庭での教育方針が学校の教育理念に沿うものであると示すためには、具体的なエピソードを交えた記述が求められます。

NG例とその問題点

最後に、具体的なNG例とその問題点についてお話しします。

論文調、または業務の提案資料のような願書

実例: 「我が家の家庭教育と貴校の教育内容を鑑みて、我が子の将来に有益であると考えるので入学を志願する。その理由は以下に示す通りである。第一に、――。第二に、――。第三に、――。」

問題点: 尊大な印象を与え、学校文化への配慮が欠ける。歴史や伝統のある学校への入学を願い出る立場として、謙虚な姿勢が求められる。

卑近過ぎるエピソードに言及が終始する願書

実例: 「娘には優しい心が育っています。先日も、電車の中でお年寄りに席を譲りました。また、いつも弟の喜ぶ絵を描いてあげています。」

問題点: 当たり前のことを強調し、底の浅さが露呈する。学校が求める深い家庭の価値観や文化を示すことが大切。

学校案内、HPに書かれている文言のコピーに近い願書

実例: 「貴校の教育理念に共感し、国際社会で活躍できる見識を育てたい。」

問題点: 学校の深い理念を理解していないことが明白。学校への熱意や独自の思いが欠けている。

志望校の教育方針が家庭教育に合致していると述べる願書

実例: 「御校の教育方針に共感しております。御校の教育方針は、我が家で大切にしている価値観と一致しています。」

問題点: 尊大な姿勢を示し、選んでいただく立場を忘れている。学校の伝統と価値観を尊重し、謙虚な姿勢が必要。「学校」が「家庭」に合致するのではなく、「家庭」が「学校」に寄せていくことが求められる。

合格を引き寄せる願書作成の極意

願書は、入学を願い出る書面です。その視点を外し、自分が書きやすい形式や内容に終始することのないよう、注意が必要です。独りよがりな願書ではなく、学校の価値観や文化を尊重し、謙虚で真摯な姿勢を持って願書を作成しましょう。

当会では、会員の方に限ったサービスではございますが、願書添削も承っております。

何百枚の中で埋没しない願書に仕上げるためには、「てにをは」を直すだけのような形式的な添削では全く意味をなしません。これまで、実際に学校に入学してきた何百人もの子どもたち、その保護者の方々がお書きになった願書を実際に見て、選ばれる願書の特徴を知り尽くした元私立小学校教諭による、内容にコミットした添削が絶定的に必要となります。

東洋英和のような神様への深い信頼を大切にするミッションスクール、そして各自の領分を弁え独立と品格を重んじる慶應義塾のような共学校など、書くべき内容の重点は学校ごとに全く異なります。そのため、ご家庭の独りよがりな願書にならぬよう、専門家として内容の是非を見極めた上で具体的な修正を施し添削を実施させていただきます。

皆様が、先生方の目に留まる唯一無二の素晴らしい願書を作成し、お子様の未来に向けて一歩を踏み出せることを心より願っております。

毎年、多くの方にご用命いただくため、お早めにお申し込みください。

日々迫りゆく受験や子育て、志望校選びや願書等の準備にご不安を抱えていらっしゃる方には、少しでもお悩みが晴れるようお力添えさせていただきたいと考えております。

執筆
慶楓会 小学校受験コース主任 松下健太

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