【コラム】ずばり、合格するご家庭になるために
出来事
6月を迎えますと、願書添削、身上書添削、お礼状添削など様々な書類を持ち帰り、また持参する日々が始まります。
大切な書類ゆえ、持ち運びは管理徹底し、道中立ち寄らず、伝書鳩のよう、と自身を可笑しく思いながら往復を重ねております。それに伴い衣替えのように、カバンもお母様がたのマザーズバッグの大きさに変わります。
慶楓会Triniteで販売しているバッグを長年愛用しておりますが、型崩れもなく大容量で大変使いやすいのですが、混雑している車内では出来るだけ縦に抱え、私なりには周囲への配慮と考えておりました。
先日の帰宅時はかなり混雑しており、電車内で向かい合う座席の間に3列の混雑でした。前の吊り革の乗客のお背中にカバンを当てないようにと気を遣えば、自分の背中が後側の乗客のお背中にあたるというような状況のなかで、突然、罵声を浴びさせられました。背中が当たるのが不愉快だったようです。即座にお詫びを申し上げましたが、混雑の電車では身動きも叶わず、その女性の途切れることない罵声を浴び続け、自分の心臓の鼓動が聞こえそうなほどの衝撃でしたが、周囲の方は無関心な様子でした。
その女性が私より先に降車後、深呼吸をしながら考えを巡らせますと、長年生きてきて叱られることはあってもそこに悪意を感じた経験が乏しいことに気がつきました。
学生時代も、秘書室時代も、駆け出しの受験講師の時も散々叱られましたが、そこには愛情が必ずあり、ゆえに全てが自身の糧となり、今まで周囲の多くの方に恵まれていたことは当然ではないことに改めて気付きを頂いた貴重な経験となりました。
最近読んだ書籍の著者、経済学者の暉峻淑子さんが、「相互承認を起点に」と提唱されています。自分の人権を考えることは、相手の人権を考えることである。
何故、あの場で、私だったのか、答えは見つからないかもしれませんが、もうしばらく「問う」ことを続けてみようと思っています。
電車内では嬉しいこともありました。
時々朝の電車がご一緒になる、白杖をお使いの男性が、先日はいつもの定位置の手すりが空いておらず何も掴まず、揺れる車内で不安定なご様子を感じました。「すみません。入り口右手の手すりは空いています。掴まりますか?」お聞きしてみますと、「大丈夫です。」と、それはそれは素敵なバリトンのお声でお答え下さいました。
広尾駅で降車時に人の流れがあり、「たびたびすみません。いつもの左側手すりがあきました、ご案内します。」と、お声をかけてみますと、またまた素敵なバリトンで「ありがとう。」とお答え下さいました。
私の行動、声かけの仕方は相手の思いに寄り添っていたのか、些か不安ではありますが、穏やかな風貌とは少し異なる素敵なバリトンの響きのお陰様で私には美しい朝のスタートとなりました。
以前の生徒さんに「アンテナをはる」を信条にしていると話されたお母様がいらっしゃいました。心踊らせる経験は良い時も、そうでない時も新鮮な気づきとして受け止めていきたいと考えています。
飾らない日常
最近の社会の傾向なのか、早期学習、0才から複数お子様のお稽古をスタートさせているご家庭が実に多いと感じています。
ご両親様ともに高学歴、高職歴と、ハイスペックなご家庭のお子様ゆえなのか、時代の流れなのか、私にも二人の娘がおりますが、いつの日か家庭をもつか、もたないかもしれませんが、次世代の環境の中での子育ての難しさを感じる時があります。その一因は、情報過多による焦燥感と多様化ではないかと私は感じています。
私が子育てをしていた頃は、親子で過ごす時間も長く自然と育めていたことが、現代では意識して作らないと育めない難しい側面もあります。受験においてはシンプルこそ一番であると確信しており、
「早寝早起き」、「三度の食事」、「外遊び」、「お家の人のお手伝い」、「親子の会話」、「家はうち」
今昔変わらず子を思う親の気持ちは尊いものであり、労を惜しまず共に汗をかき、全身全霊で喜怒哀楽を分かち合う飾らない日常を粛々と体現していくことに尽きます。
合格するご家庭になるために
「お話が聞ける子」、「待てる子」、「素直な子」合格するお子様像として私が大切にしている3本柱です。
知育はこの土台の育みの上であり、逆はあり得ません。これは、お子様だけではなく、ご家庭にも合格像として当てはまると感じています。
「子は親を映す鏡」という諺があるように、ご両親様のお言葉、環境がお子様の人格を形成していきます。
「生きたお手本」の中で育つお子様が合格するのは自然の摂理です。
「光を見るために目があり、音を聞くために耳があり、時間というものを感じるために心がある」
シスター渡邉和子さんのお言葉です。どうぞ今しか送れない豊かな夏休みをお過ごし下さい。
幼稚園受験主任講師 佐藤浩子
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