【コラム】年長の1年間の地図 ― 新年長から考査本番まで

皆さん、こんにちは。慶楓会小学校受験コース主任の松下健太です。
「いよいよ受験の学年となった、年長の1年間をどう過ごすかで、受験の成果は大きく変わります。」
そう言われても、毎日の生活や授業に追われる中で、「一体なにを優先したらよいのか」と迷うご家庭は少なくありません。
実際に、多くの保護者の方から
「共働き家庭の我が家には、時間が絶対的に足りない」
「いろんな噂が渦巻いていて、何が正解か分からない」
「そもそも、何から手をつけたらいいのかわからない」
という声を聞きます。
特に、11月から「新年長」となる「現年中」のご家庭にとっては、いよいよ受験準備が本格化していく大切なタイミング。ここで1年間の見通しを持てるかどうかで、親子の安心感も大きく変わってきます。
なお、このコラムで「年長」という時は、年中の11月〜3月のいわゆる「新年長」の期間を含みます。
小学校受験の特異性
実際のところ、小学校受験は、中学・高校・大学受験とは大きく異なる特性があります。いえ、特性というよりも、特異性と表現する方が適切とさえ言えるかもしれません。
まず、小学校受験に臨むお子さんの年齢が5〜6歳と非常に幼いことが挙げられます。
そのため、小学校受験を突破するためには、一般にイメージされる「机上の勉強」だけでなく、生活習慣や社会性、体力面での成長も同時に求められます。
また、過去問が公開されている学校が少なく、情報収集の難易度が高く、それでいて正しい情報の見極めをすることの重要性が他の受験より高いという特徴もあります。
さらに、この時期のお子さんは日々目覚ましい成長を遂げています。
半年前にはできなかったことが突然できるようになったり、興味の対象が急激に変わったりします。
そんな中で、お子さんの成長のペースに合わせながら、確実に力をつけていくためには、長期的な視点と段階的な計画が不可欠です。
今回のコラムでは、年長の1年間をどのように過ごし、どんな準備を積み重ねていけばよいのかを、具体的な流れに沿って整理しました。
読んだあとには、必ずや
「進む道筋が見えた」
「親子で安心して取り組める」
と感じてもらえるはずです。
年長の1年間の地図
受験準備は、例えるならば、長い旅のようなものです。
目的地に着くためには、まず全体像としての「地図=スケジュール」を把握することから始めましょう。
東京の小学校受験を例にすると、面接は10月頃から始まり、考査は毎年11月〜12月に集中しています。その前には、春から夏にかけて学校説明会や公開授業、イベントが行われるのが一般的です。そしてそれまでの、新年長期間をどのように過ごすかが、まずは大切な一歩を歩み出せるかどうかの違いになります。
11月〜3月 余裕のある、新年長の時期
年中児は、11月を迎えると幼児教室では新年長という呼称に変わります。
見通しを持って早い時期から準備を重ねている方は、これまでの年中から、いよいよ新年長という思いを胸に、気持ちも新たに学習が始まっていきます。
一方、ひとつ上の学年の「先輩」たちは、11/1を皮切りに、試験本番を迎えている時期です。教室は、この時期特有の、ややピリピリした空気に包まれており、その空気感を肌で感じておくのも貴重な経験です。
そして多くのお教室では、新年長より、年中までとは打って変わって、「学校別クラス」のような本格的な受験対策が始まっていきます。
ご家庭で求められる復習や宿題なども量が増え、質も高まっていく時です。
ご家庭のサポートも欠かせず、教室の送迎や説明会などのため、共働きのご家庭は特に、有給休暇の取得も計画的に行なっていく必要があります。
そうは言っても、秋から冬の間はまだまだ気持ちにはゆとりがあります。
実はこの時期から早くも説明会を実施している学校もありますので、気持ちに余裕がある早いうちから、多くの学校に足を運んでいくことも大切です。
そうすることにより、4月以降にあらためて本命校の学校説明会に足を運んだ際のイメージも持ちやすくなります。
そしてこの時期に最も大切なことは、学習の基盤固めです。
早くから受験対策を積み重ねている方にとっては信じ難いかもしれませんが、
うちの子は絵本を読むのも好きだし、絵も工作も得意。
運動も園では元気いっぱいの様子だから、小学校受験なんて、直前にちょっと対策すれば余裕だろう。
という考えの方は、かなりの数、いらっしゃいます。
そしてこういった方の多くは、
受験対策なんて4月以降で十分。なんなら夏休みにちょっと夏期講習?に行かせて、雰囲気がわかれば、それでいいだろう。
くらいの温度感です。
もちろん、【 お子さんがご優秀で、ご家庭教育も抜かりなく行なっており、何よりもご両親が私学の文化をお分かりの方 】 でいらっしゃれば、幼児教室で特別な対策は不要かもしれません。
けれども小学校受験は、お子さんだけでなく、ご家族が一丸となって臨む受験です。
上記のような考え方の方は往々にして、コスパ&タイパ重視で、何事も「うまく立ち回って、効率的にすすめてやろう」という考えに陥りがちです。
そのため、伝統私学で求められるような振る舞いの価値観を理解することにかなりの時間を要します。
ある意味では、早くから受験対策をスタートするのは「親御様のため」です。
本来であれば、新年長になるよりももっと早い時期から、適切な価値観や判断を行える考え方の基盤を形成していくことが重要です。
そうした中で、少なくとも新年長の11月からの日々は受験モードに考え方を切り替えていただくことによって、4月以降の本格的な受験の日々に向けての下地を作っていくことが重要になります。
4月〜5月 学校説明会シーズンが本格化
新学期を迎えると同時に、多くの私立小学校で学校説明会が始まります。この時期は「情報収集の黄金期」と言えるでしょう。
- 学校説明会への参加 各校の教育方針や校風を知る絶好の機会
- 公開授業の見学 実際の授業風景から学校の雰囲気を感じ取る
- 校舎見学 施設環境や子どもたちの様子を直接確認
- 在校生との交流企画 お子さんが学校生活をイメージしやすくなる
この時期に大切なのは、「唯一無二の志望校選び」を急がないことです。
まずは幅広く情報を集め、お子さんと一緒に様々な学校を見学してみましょう。
意外な発見や新たな選択肢が見つかることがよくあります。
できるだけ多くの学校に足を運び、それぞれの学校の良さを知る中で、志望校を固めていきましょう。
なお、こうした機会に足を運んだことは学校側には記録として残ります。
一回も足を運んだことがない人が急に試験を受けにきても、学校の先生からすれば「この意志は本物かな?」と思うのは当然です。
また、試験を公平に行おうとすればするほど、ある基準に沿って行なった評価がほぼ同じラインに並ぶことはあります。
その時、どうしても最後にどちらかを選ばなければならないとしたら、どうでしょうか?
また、補欠合格の候補者を選ぶ時に、何度も足繁く通ってくれた人と、試験本番しか来なかった人と、どちらの方が「喜んで入学してくれそう」と学校側が捉えるでしょうか?
つまりは、そういうことです。
6月〜8月 模試や講習会を通じて実力確認
夏は「実力養成期」です。春に集めた情報をもとに、具体的な対策を強化していきます。
- 夏期講習の活用 集中的な学習で苦手分野を克服
- 模試の受験 現在の実力と課題を客観的に把握、ただしあくまで参考に
- 個別指導の強化 お子さんの特性に合わせたきめ細やかな指導の場を得る
- 夏休み中の生活習慣管理 規則正しいリズムを保ちながら学習を継続
模試については、取り組み方にも注意が必要です。
模試は、単に「何点取れるか」といった力試しのためではなく、「試験慣れ」という観点から重要です。初めて見る問題に対する対応力や、時間配分の感覚を身につける貴重な機会となります。
時々、「模試の結果が壊滅的だった」と意気消沈している親御さんを見かけますが、私の経験上、模試の結果と実際の考査の合否は、ほぼ相関なしと言っていいくらい、当てになりません。
模試はあくまで模試であり、それは本番の結果とは関係がないと割り切りましょう。
慶楓会では、「模試で壊滅的だった」というお子さんほど、実際の試験で合格しています。
その理由をかいつまんで言えば、慶楓会において私は私立小学校での教員経験を背景に、「本番の試験での評価基準」で授業をしており、慶楓会の子どもたちはその軸での学びを積み重ねているためです。したがって試験本番では、私立小学校の教員がもっとも評価するような学びへの姿勢が子どもたちには自然と身についており、模試とは全く違う基準で評価された結果、合格に結びつくのです。
巷で行われている模試は、「過去問の形式」をなぞっただけ、ということが多く、実際に私立小学校の先生方が「どのような視点で物事を判断しているか」(これを評価基準と言います)を知らないまま作られていることもあるのです。
そんなわけですから、模試の結果を気にしても仕方ないのです。
9月〜10月 願書提出、直前特訓
いよいよ本番が近づく「仕上げの時期」です。これまでの積み重ねを総動員します。
- 願書作成と提出 志望動機の明確化と丁寧な準備
- 面接対策の強化 家族としての考えをまとめ、適切な表現力を養う
- 直前特訓への参加 最後の仕上げをし、本番をシミュレーション
- 体調管理の徹底 万全のコンディションで本番を迎える準備
この時期は、新しいことを詰め込む必要は、一切ありません。
それよりも、これまでの学習内容を確実に定着させることに重点を置くべきです。
また、保護者の方は願書作成や面接練習が立て続けにあるため、スケジュールをしっかりと管理していくことが大切です。
願書の書式も、提出の手順も、学校によって全く異なりますので、これらを確実に把握して、間違いなくひとつ一つのことを進めていく必要があります。
最近は「ミライコンパス」の導入によって、プラットフォームがある程度統一されてきましたが、それでも未だに手書きの願書の様式は昔のままです。
- 事前提出の願書に、小論文レベルの字数で文章を書く必要のある学校
- 面接当日に長文のアンケートがある学校
- 出願した後に「テーマ作文」などという名の様式が送られてくる学校
など本当にさまざまです。
また季節の変わり目、試験本番を目の前に、体調を崩しやすい時期なので、健康管理に留意することも欠かせません。
11月〜12月 各校の入試
ついに本番の時期を迎えます。これまでの準備が試される瞬間です。
- 入試当日の準備 持ち物チェックと時間管理
- お子さんの心理的サポート 緊張を和らげ、自信を持たせる声かけ
- 複数校受験の調整 日程や移動時間を考慮したスケジュール管理
- 結果発表への対応 合格・不合格の両方のケースを想定した心構え
つまり、年長の1年間は
新年長(年中)のあいだに基礎を築き
→ 春から本格的に情報を集め
→ 夏で実力を確かなものにし
→ 秋に仕上げ、本番を迎える
という大きな流れで進んでいきます。
早い段階でこの全体像を理解しておけば、「今やるべきこと」と「先に備えること」を整理しやすくなり、余計な焦りを減らすことができます。
また、各時期の目標が明確になることで、お子さん自身も、そして親御様も見通しを持って取り組むことができるでしょう。
先々のイメージを明確にして、「この時期までに○○をする」という明確な道筋を描いておくことが、受験準備を確実な足取りで進めるための第一歩になるのです。
より深い内容をお知りになりたい場合はこちらに詳細版を掲載しています。
関連するご案内
新年長(現年中児)コースは10月26日(月)・27日(火)、白金台教室で行います。

年長コース・年中コースの各クラスと、曜日・時間をご案内しています。

執筆
慶楓会 小学校受験コース 主任 松下健太
体験授業・ご面談も随時承ります






