【コラム】考査直前の最終チェック ― 指示を聞く型

昨年の考査が終わった直後に、Instagramで「試験当日、合否を分けたものの正体」というリールを公開しました。
再生は4万8,000回、保存は160件を超え、受験を終えたご家庭だけでなく、これから考査を迎えるご家庭にも、いまも見られ続けています。
二人の受験生がほとんど同点でも、どちらかを不合格にせざるを得ないことがあり、その違いを決めるのはペーパーの点数ではなく、話を聞く姿勢や、借りた道具を返すときの仕草のような、わずかなふるまいの差だと、このリールでお伝えしました。
では、そのわずかな差は、考査の前に、ご家庭で確かめられるのでしょうか。
「やめ、鉛筆を置いて」
考査の席で先生が「やめ」とおっしゃったとき、お子様は、書きかけの線をその場で止めて、両手を膝に置いたまま、先生のお顔を見ていられるでしょうか。
「はじめ」の合図が響くより前に、手にした鉛筆の先がすでに紙に触れてしまってはいないでしょうか。
私が私立小学校で入学試験に関わっていた頃に見てきた、点数の並んだ2人の子の合否が分かれる場面でも、その差は、「はじめ」の合図を待たずに書き始めてしまうといった、毎日の練習で身についているはずの当日の細かなふるまいから生まれていることがほとんどでした。
ご家庭で普段ペーパーの丸つけをなさるときには、どうしても答えが合っているかどうかに意識が向きがちです。
そのため、「はじめ」の前に鉛筆の先が紙に触れていなかったかという点にまでは、なかなか確かめが行き届かないものです。
実際の考査の席では、その一度の書き出しが、点数では並んでいた子とのあいだの差になってしまい、あとの問題をどれだけ正しく解けたとしても、もう取り返せないことがあります。
実際に、私ども幼児教室にも、考査が終わった学校からフィードバックをいただけることがありますが、その際にも
総合的な判断で合格にはしたけれど、
カンニングをしていると疑われるようなそぶりがあるお子さんもいた。
というような、お知らせをいただくこともあります。
神奈川ではすでに考査が始まり、東京の考査が始まる11月1日までも、あと1週間ほどです。
残りの日々は、家で続けてきた動きを考査の席でもいつもどおりにできるかを、お子様と一緒に見直す時間に充てていただきたいと考えています。
* * *
申し遅れました。幼児教室「慶楓会」小学校受験コース主任の松下健太です。
「直前期も早寝早起きを」「栄養のあるものを食べましょう」といったような、皆様がすでによくご承知の当たり前のお題目を、ここで並べるつもりはありません。
私が入学試験の場で目にしてきたことのうち、合否に直結しながら、ご家庭では見落とされやすい点だけを、六つの項目に絞りました。
このコラムでは、そのうち一つ目の、合図と指示に応える型を取り上げ、残りの五つは、末尾でご案内している詳細版に書きました。
指示を聞く型
減点を防ぐ
私が試験官を務めていた頃、受験生の姿の中でいちばん「もったいない」と感じていたのが、合図を待てずに動いてしまうフライングでした。
ペーパーで「はじめ」の合図を待たずに問題に取りかかってしまったり、先生の指示を最後まで聞き終えないまま動き出してしまったりする子が、毎年のようにいます。
こうしたふるまいは、ご家庭でお考えになっている以上に結果への影響が大きく、大幅な減点になることがあります。
「合図を聞いてから始める」というふるまいを通して、指示を理解する力の根本が見られているからです。
どんなにペーパーができても、この一度のフライングで、かなり厳しい評価になってしまうことがあるのです。
本当にもったいないことです。
反対に、指示への対応の型がしっかりできていれば、仮にほかの場面で多少のミスがあったとしても、「この子は基本ができている」という印象を先生方に持っていただけます。
試験官の先生方は、試験が始まって最初の3分ほどのあいだに、その子の指示への対応をかなり詳しく見ていらっしゃることもあります。
だからこそ直前期に見直していただきたいのが、次の、指示を聞き取る練習の型です。
指示の聞き取り練習の型
「聞く→確認→開始→中断→再開」
「はじめ」と「やめ」
これまでの家庭学習の中で、使う合図の言葉は統一されていたでしょうか。
これまであまり意識してこなかったということでしたら、通っておられる教室の先生がお使いになっている言葉に、そのまま揃えていただくのがよいでしょう。
「えんぴつを持って」(えんぴつを持つ)
「はじめ」(すぐに解答を始める)
「やめ」(途中でも、解答を中断する)
「やめ」のあとは「手は膝、目は先生」です。
作業を即座に中断して注目の姿勢をとる、ということができない子はかなり多く、それも悪目立ちしてしまう原因の一つです。
直前期には、難しいペーパーの内容に躍起になるよりも、簡単な問題を使って、この一連の流れを確かめ直すことが大切です。
考査当日の集合時刻が遅めでしたら、朝の時間を使って、同じ流れをご家庭で繰り返しておいてください。
ペーパーだけでなく、指示行動でも同じ練習ができます。
(指示行動の)練習
1. 指示を聞く
「折り紙で、自分の好きなものを作ってください。始めましょう」
2. 60秒作る
実際に手を動かしてみる
3. 「やめ」
両手を膝に置き、目は親を見る
同じ言葉と同じ流れを何度も繰り返すうちに、一連の動きがお子様自身の習慣になり、考査当日という緊張する場でも、日頃の練習と同じように反応できるようになります。
聞き返す一言
先生の指示がうまく聞き取れなかったり、途中で分からなくなったりしたときに、お子様がその場で口にできる言葉も、あらかじめ決めておきましょう。
「先生、もう一度おっしゃっていただけますか?」
ここで勝手に大声を出すのは御法度です。
手を挙げて落ち着いて伝えれば、先生は対応してくださることが多いでしょう(していただけないこともあります)。
ただし、これが使えるのは1回だけです。
2回目以降は、指示を聞く姿勢そのものに疑問を持たれて印象を損ねてしまいますので、何よりも最初の指示を集中して聞き取ることが大切になります。
行動観察で合否を分けた場面
手を止めた子、止めなかった子
ある年の行動観察で、「今までそれぞれの人が作っていたものを、今度はグループで一緒に作ってください」という指示が出されたことがありました。
子どもたちからすれば、作業の途中で課題が変わった、と感じられたことでしょう。
こうした予定外に思える課題でも、合格した子どもたちに共通していたのは、「やめ」の合図と同時に手を完全に止めて、新しい指示を最後まで聞いていたことでした。
指示を聞き終えたあとに、「みんなで一緒に作るんだね」「じゃあ、どうやって分担しようか」と言い合いながら、指示された内容を確かめてから動き出していたのです。
その一方で、不合格になった子の多くは、先生が説明している途中で「あ、グループ活動ね」と分かったつもりになり、最後まで聞き終えないまま動いてしまっていました。
あるいは、グループに必要な話し合いよりも、自分の作業に妙にこだわって、意地になって続けようとしていました。
この「小さな差」が、最終的な評価を大きく左右したことは、言うまでもありません。
評価の土台
先生の指示を聞き取るということは、試験のすべての分野に共通する、いちばん根幹にある最重要項目です。
この基礎ができていなければ、そもそも活動に適切に取り組むこと自体が難しくなります。
どんな姿が評価されるか、という、いわば「プラスの視点」は、最低限の指示行動ができていて初めて考えるべきことなのです。
より深い内容をお知りになりたい場合はこちらに詳細版を掲載しています。
関連するご案内
10月26日(月)〜30日(金)、白金台教室で、各校の試験形式に合わせた年長児の直前講習を行います。
(各講座先着10名、会員または当会の講座参加経験者が対象)

執筆
慶楓会 小学校受験コース 主任 松下健太
体験授業・ご面談も随時承ります






