【コラム】ご家庭のお考えの表現「保護者課題」の取り組みについて

当会では2022年度(2023年度入学考査準備)より小学校受験年長コース保護者の方を対象とした「保護者課題」という取り組みを開始いたしました。保護者の方に2週間に1回程度の頻度で、願書や面接で問われることの多い家庭教育、ご家庭の価値観を問うようなテーマについての短い作文をご提出していただいています。今回は、こうした取り組みの簡単なご紹介と、取り組みを通じて考えている事柄について、皆様にお伝えさせていただきたく存じます。

もくじ

「保護者課題」の取り組み内容

実施の背景

今年度より「保護者課題」の取り組みを始めた背景には、例年、願書添削を行っている中で「これはもっと早い時期から、ご家庭自身にお考えを表現する機会をもっていただく必要がある」ことを痛感したという経験があります。年長の夏頃に、願書案としてご家庭がお書きになった文章を初めて拝見すると、各学校からの課題に答える以前に、文章の構成、表現方法や語彙、ご家庭としての姿勢(立脚点)などについて、ご再考をいただきたいと感じることが多く、早い時期からそうした点についてご助言を差し上げる必要があると感じた次第です。

実施の具体

「保護者課題」でお示ししている質問の例は以下のようなものです。(第1回〜第3回目まで)

お母様へ
  • 家庭の教育方針を教えてください。
  • しつけで気をつけていることは何ですか。
  • 子育てで楽しいと思うことは何ですか。
お父様へ
  • 学校教育にどのようなことを期待しますか。
  • 入学後、学校とどのような関わりを持とうと考えていますか。
  • 休日はお子さんとどのように過ごしていますか。

「保護者課題」の取り組みではご提出いただいた全ての課題に目を通し、全体に対するフィードバックを行なった上でご要望があればご面談にてご助言を差し上げるというお約束のもとに執り行っています。なお、出願の少し前の時期に行う有料の「願書添削」や「面接練習」とは異なり、お一人お一人の文章にコメントを付して添削することまではしていない代わりに、課題のご提供やフィードバックは全て無料にて差し上げております。
取り組みが進み、回を重ねるほど、ご家庭の記述が的を射た内容と表現に変わりつつあることを実感しています。初めは支離滅裂であったり、課題で問われていることではなく自分の言いたいことに話題が転換されてしまったりという文章が目立っていましたが、最近では、多くの方が助言を真摯に受け止めて次の課題の記述の際に活かしてくださっていると感じています。

取り組みから見えてきた事柄

フィードバックのご紹介

前述のように、個別のフィードバックではなく、保護者の方から寄せられたご回答全体へのフィードバックですが、過去の例から、いくつかをピックアップしてみます。

課題「学校教育にどのようなことを期待しますか。」に対するご回答へのフィードバック(一部抜粋)

小学校での生活を手段としてお考えの方があるようです。(上級学校へのステップのようなイメージでしょうか)系統性を持った学習を行う視点に立てば、たしかに一定の納得もありますが、一方で子ども達が、そこ(学校)で過ごす時間そのものの価値について、より深くお考えいただきたいと思います。小学校の先生方も、自分たちの教育活動が単なる手段と捉えられては、あまり良い印象を抱きません。学校での時間を充実して過ごした結果、人格が形成されていく過程について、各ご家庭がご理解をいただければと存じます。

課題「子育てで楽しいと思うことは何ですか。」に対するご回答へのフィードバック(一部抜粋)

父母共に、「何々をしている時が楽しい」「休日は何々をしている」という事実としての出来事だけでなく、その意図や今後への思いなど、背景となる考えに紙幅を多めに割くようにした方が良いです。何をしているかよりも、なぜしているか、の方が大切です。実際のお子さんの姿を表現をすることは大切ですが、記述内容が「子育ての中でこういった出来事があった」というような言わば「出たとこ勝負」のような事柄に終始してしまいますと、ご家庭の教育の方向性ないしご両親の価値観に基づく方向づけが見えにくくなってしまう恐れがあります。意図的な育児、家庭教育を読み手に印象付けるには、書き手であるご両親様のお考えが明確に伝わるように、事実、考え、意図的行動を区別しながら表現するようになさってみてください。

課題「お子さんの伸ばしたいと思う点はどこですか。」に対するご回答へのフィードバック(一部抜粋)

(前略)また別の視点からのご助言として、慶楓会のお父様方には当てはまらないこととは思いますが、あまりに盲目的な愛情(特にお嬢様に対するお父様の視点)については、学校側も一定の警戒感を示すこともあります。すなわち「うちの子に限って」というような我が子への過信や、トラブルの際にも「大切なうちの子になんということを」という客観的な判断の欠如が透けて見えることもあり、一歩引いて冷静になることができるか、疑問視されかねません。先ほど述べた謙虚さにも関わることですが、やはりまだまだ未熟な子どもであることを意識の中に常に置いておき、「良いところ」と思うところもその裏返しの現れ方がありうることも想定する必要があるかと思います。「思いやりのある優しい我が子に限って、そんなことはあり得ない」と思うような出来事も、今後の子育て、特に小学校生活の中で子ども同士の関わりの中では必ず出てくるものです。そうした時に、盲目の愛情は時に大きな危うさをはらみます。

保護者課題の取り組みを通じて

形式面からも内容面からも、回を追うごとに保護者の方のご回答の質が次第に向上してきていることは間違いがないのですが、それでもやはりご家庭ごとに一定の傾向、表現の癖のようなものがあるので、行きつ戻りつしながらご指導を差し上げています。また、中途入会をなさった方は、初期にすでに保護者にお伝えをしている事柄について意識が欠如している場合も多く、改めて過去のフィードバックをバックナンバーのようにお示しして補うことをしております。

ただし、こうした取り組みから保護者の方自身が子育て、家庭教育について見つめ直す機会としてくださっていることは間違いがないようで、一定の意味は生じているという実感があります。そのため、この取り組みは夏頃の願書作成に取り掛かり始める時期までは続けてまいりたいと考えております。

いよいよ4月の新年度が始まり、受験の学年のご家庭にとってはエンジンの回転数を上げていく時です。これまでの地道な取り組みとしての家庭学習や体験活動は継続しつつ、頑張っているお子様と同じかそれ以上に、保護者の方も受験への意識をさらに固め、毎日の丁寧な暮らしを続けていただきたく存じます。そうした中で子育て・家庭教育に関する考えを整理し、願書添削や面接に備えていただければと考えております。

保護者課題が、そのペースメーカーのようになっていれば幸いです。

執筆
小学校受験コース 主任講師 松下健太

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