【コラム】受験が「苦行」に変わるとき ― 前向きに始めた準備が、つらくなる理由

受験が「苦行」に変わるとき ― 前向きに始めた準備が、つらくなる理由

幼稚園・小学校受験を志す家庭の多くは、当初は我が子の将来のために前向きな気持ちで準備を始めます。

特に受験未経験の家庭では、子どもが幼児教室の体験授業で楽しそうに取り組む姿を見て、大きな期待を抱きます。

しかし、定期的な教室通いが始まり、少し長いスパンで様子を見るようになると、状況は一変します。

申し遅れました。幼児教室「慶楓会」で小学校受験コース主任を務めております、松下健太と申します。私立小学校で10年以上にわたり教壇に立ち、入学試験の現場にも直接携わってまいりました。

このコラムでは、前向きに始めたはずの準備が苦行に変わっていく経緯と、その根本にある原因、そして、お子さん本来の生き生きした姿を引き出しながら家族一丸となって明るく受験生活を乗り越えていくための土台となる考え方をお伝えします。

もくじ

通い始めてから起きること

体験授業の笑顔のあとで

苦手分野に直面した子どもが「できない」「いやだ」と反応するのを見て、保護者は焦り始めます。

「他の子は、言われてすぐにできるのに」
「うちの子は、何度言っても分からない」

という思いが渦巻き、当初の前向きな気持ちにかげりが見え始めます。

毎日早起きをして、一緒に取り組んでいたはずの縄跳びやボールつきも、励ます立場であるはずの保護者様自身が億劫になり、やがて「今日一日くらいいいか」となって、気づくと玄関の隅で縄やボールが埃をかぶるようになっていきます。

そして受験直前には、模試の結果や他児との比較で焦りはピークに達します。

お金も時間もかかり、「なぜこんな辛い思いを」と悩む保護者も少なくありません。子どもの姿も親の写し鏡のように不安定になり、受験は完全に苦行と化してしまいます。

よその子に目が向くとき

この「苦行感」は、ほぼ誰もが経験するものです。

その根本原因は「比較」にあります。

小学校受験を志される保護者の多くは、自らの「努力」で道を切り開いてきた方々です。

そして、「努力は成果につながる」と信じているからこそ、子どもが思い通りに成長しない現実に無力感を覚えます。

さらに競争構造の中で「我が子の成長を促す」視点から「他の子より秀でて合格枠を勝ち取る」視点へと変化し、「うちの子は他の子に比べて全くできない」という考えに囚われていきます。

比較は一度始めるときりがありません。本来の目的である「子ども自身が学びに向かう人間性を育む」ことを見失い、手段であるはずの競争が目的化してしまうのです。

それでもまだ、ご家庭がその比較に対して客観的な視点を持ち合わせてさえいれば、途中ではたと気づいて立ち止まることも可能です。

果たして、自分たちが目指していたのは他の子より「上」の位置を占めることだったのか、そうではなく子ども自身が自らの関心を広げて学びに向かう人間性を備えていく姿を育むことであったのか。そこにきちんと立ち返って考えることが必要です。

他のお子さんが、たとえどんなに優れたお子さんに見えても、やはり幼児です。家に帰ればわがままも言い、ぐずったり、聞き分けがなかったりする姿は必ずあるものです。

我が子もそう、できることもあり、できないこともあり、という姿が当たり前であるということをいつも胸に留め置いておくことです。

苦行の側へ傾かないために

方法論の手前にあるもの

比較から抜け出す手がかりは、保護者の心持ちにあると私は考えています。

物事を成功に導くのは、「メソッド」ではなく、突き詰めた先にある「マインド」である、ということは、深い説明を必要とせずとも、自明の理としてご理解いただけるものと思います。

方法論だけを集積したご家庭は、計画が頓挫した瞬間に立ち往生してしまうことがあります。

ただし、ここでいうマインドとは、中途半端な精神論のことではありません。

むしろ、小学校受験という特殊でありながらも「目指す先が明確」である道のりにおける、よくある迷い、悩みに焦点を当てながら、それらをいかに昇華して、適切な心持ちに変化させていくかという、建設的かつ戦略的な考え方です。

すなわち、このマインドが、受験対策が「地獄の苦行」になってしまうか、あるいは「天国のように豊かな家族の日々」として過ごせるのかの、まさに分岐点になると考えています。

手帳と待受画面

最も大事な基本原則は、「本来の目的を見失わない」ということです。

気持ちを揺るがせるような出来事(例:教室で出来る子を見かける、模試の結果が奮わない、など)があると、すぐにそのことで不安定になり、動揺しがちです。そのような時、気持ちが外力によって持っていかれないようにするために、自分にとって一番効く言葉を目につくようにおいておくというような「仕掛け」を準備しておくようにしましょう。

過去、受験をすでに終えた保護者の中には、自分がいつも使っている手帳の表紙や、携帯電話の待受画面などに、「受験は親のエゴ」「○○(子どもの名前)は、もう十分頑張っている」など肝に銘じておきたい言葉を表示しておき、常に物理的に目に入るようにした、という方がいらっしゃいました。

子育ては過程に価値がある

受験準備はすべて(そもそも「すべて」という範囲すら曖昧です)をやり遂げることが目的ではなく、お子さんの成長の一歩ずつを楽しみながら、愛情のある暮らしを送ることがとても大切です。

お子さんが初めて歩いた日、初めて言葉を発した日を思い出し、小さな一歩ずつの成長を喜んでいたことを思い出しましょう。

鬼の形相による訓練の結果としてボールつきが100回できること、それ自体がそれほどまでに重要でしょうか。できなくても諦めず、1回、また1回とわずかであっても回数を増やそうとしながら、地道に努力を重ねていく姿勢を養い、その結果として自信を育み自己肯定感を育てていくことの方が大事ではないでしょうか。

結果だけに意識が向いてしまうと、結果如何によりプロセスの価値までが否定されかねません。結果のみが求められる一部の仕事とは異なり、子育てはその過程それ自体に価値があると考えて楽しみましょう。

このコラムには、以前このホームページに書いたコラム「受験は苦行ではない」の第1回と第2回の文も、あらためて収めました。このほかの手立ては、第2回にまとめています。

比較が苦行の元になると知った上で受験生活に臨んでいただくことにより、受験生活は「苦行」どころか、我が子と共に歩む輝かしい喜びに満ちた道のりに変わっていくでしょう。

より深い内容をお知りになりたい場合はこちらに詳細版を掲載しています。

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午前は今年合格したご家庭の体験談、午後は主任講師による今年の入試の分析で、午前のみ・午後のみ・通しのいずれでもご参加いただけます。

対象は、小学校受験や幼稚園受験を考えている、年中(新年長)以下のお子さんがいるご家庭です。

当日は白金台教室でお子さんのお預かり(無料・3歳以上の未就学児・定員15名)もあります。

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執筆
慶楓会 小学校受験コース 主任 松下健太

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