【コラム】面接の心構え(小学校受験編)

慶楓会 小学校受験コース主任 松下健太です。

いよいよ出願を完了し、面接の日時を受験校から早速受け取られているご家庭もおありかと存じます。

慶楓会では、従来より面接練習を実施してまいりましたが、今年度に関しては「早期面接練習」と称して、直前期のみならず、春先あたりから入念に面接対策を継続してまいりました。直前期の現在は、会員のみを対象とした「面接練習」が佳境を迎えております。

今回のコラムでは、面接に対する心構えにつきまして、小学校受験コースの立場からお伝えしたいと思います。

小学校受験における面接の位置づけ

「面接で良い評価がつくと 、(他の考査における判定が一定の水準にある限り)、ほぼ合格する」というのは、ある名門私立小学校教諭の話です。

その学校では、面接だけでなく、ペーパー試験や巧緻性、体操、行動観察など複数の試験内容を組み合わせて総合的な評価がなされる入試制度を採っていますが、そうした中で面接の占める比重は非常に高いことを示唆しています。よく、「ペーパーは満点を取れる必要はありません」という学校側からのメッセージが発せられることがありますが、実際の合否判定においては、特定領域だけが飛び抜けて優秀であれば合格するのではなく、(ペーパーに限らず)全ての試験領域において一定の水準を超えている志願者が、まずは合否判定の俎上に乗り、その上で各学校の定める合否基準の傾斜配分に従って順位を決め、その上位から合格者が決定されます。

したがって先に挙げた名門私立小学校教諭の学校では、「ペーパ−100点、その他は全て中の下の評価、面接は下位評価」という方よりも、「ペーパー75点、その他は中の評価、面接は上位評価」という方の方が合格可能性が高いと言えます。

面接はご家庭の姿を総合的に評価する場であり、学校とご家庭とが共に歩んでいくことができるか否かを判断する、重要な場です。当然ながら応答内容の文言のみで評価が決まるのではなく、「印象」や「雰囲気」を含むそのご家庭の姿がそのまま評価対象となります。

立て板に水の如く流麗な言葉で志望理由を述べられていたとしても、ご両親のお考えのピントがずれていたり、親子共に表情に覇気がなかったり、尊大な様子が透けて見えたりすれば、合格はできないということです。

慶楓会が有する、他校や過年度の入学考査の動向に関する知見から考えましても、面接重視は、多くの学校に共通する方針です。過去に、「この子の実力ならば、合格可能性は極めて高い」と事前に推定していた方のうち、結果に結び付かなかった方の多くに共通することは、お父様が教室に姿を現さず面接練習を実施できなかった、お子さんに強いる努力に比してご両親の熱意が圧倒的に低かった(ご両親は、面倒なことから逃げがちであった)、というようなお姿が思い起こされます。

厳しいようですが、お子さんがどれだけ頑張っていても、ご両親がそれを台無しにしてしまう、ということが事実、ございます。面接を決して甘く見ないようになさってください。

慶應義塾幼稚舎や横浜初等部のように面接がない学校について

幼稚園受験では面接のない園は皆無ですが、小学校受験では面接がない学校もいくつか存在しています。その筆頭は、慶應義塾幼稚舎および横浜初等部ですが、この試験形式を見て短絡視し、「慶應は面接がないから」と仰り(もしかしたら、うちの子でも合格するかも……)という安易な発想で受験なさる方が、世の中には一定数いらっしゃるようです。(慶楓会会員には、そのような甘い考えの方はいらっしゃいません)

確かに慶應は、現在は親の面接は課していませんが、それは面接を軽視しているわけではないということは過去のコラムでも指摘いたしました。事実、慶應義塾は幼稚舎や横浜初等部といった小学校段階のみならず全ての学校段階における入学試験の制度において、面接重視の姿勢を押し出しています。そうした一貫教育の最初期を担う両校において、面接に相当する評価が軽視されている道理はありません。

親の面接に代わるものとして、両校とも、相当分量の文字数を記述する必要がある願書の提出が必須となります。そして学校側は、全ての願書を一言一句お読みになられています。先年の入学者説明会においても、出願者の中には願書の記述の中で慶應義塾創立者の御名前を誤って記述されている方が見えた、などといった話題が出さえしました。こうした基本的な部分で、選考から漏れる結果となってしまうのは、本当につまらないことです。現時点では親の面接はなくとも、願書がそれに代わるものの一部として、大変重要視されていることを自覚していただきたいと考えます。

その一方、志願者本人とされる子どもの面接に代わるものとしては、試験時間を通じてたくさんの質問が投げかけられます。(残念ながら、投げかけられないお子さんもいらっしゃいます。) そうした質問への応答、態度、総合的な様子が全て評価の対象となり、選抜が実施されています。試験中の応答の様子から合否判定に直結する重要な判断がなされるため、これは一般的にイメージされるような面接室での質疑応答とは形が異なれども、まさに面接試験そのものと言っても良いほどです。むしろ、絵画や造形の課題に取り組みながら応答することになるので、複数のことを同時になさなければならず、こちらの形式の方が難易度はより高いと言えるでしょう。こうした試験官からの働きかけのことを、よく受験産業界では「お尋ね」といった軽薄な言葉遣いで表し、一問一答ないし問われたことへの端的な応答ではなく何でも自分の側に引きつけるような返答を強いる、無謀な指導が一部の幼児教室では行われていることを耳にして、残念に感じております。事前に暗記した内容を再生するような応答ではない、その子らしさが表現される応答や態度を含む様子が示されることが重要です。

評価される面接とは

実際のところ、面接で評価されるのはどのような点でしょうか。上に述べた慶應義塾幼稚舎や慶應義塾横浜初等部の他、早稲田実業学校初等部や洗足学園小学校などのように、子どもに対する質問が集中する学校の対策は別途対策が必要ですが、一般的な面接試験における保護者の振る舞いに関して、いくつか挙げてみます。

態度・姿勢
  • 落ち着いている
  • 堂々としている
  • 謙虚である
  • 夫婦間や親子の愛情が感じられる
  • 質問に対して即座に応答している(想定問答を暗記しているのではなく、普段から意識している事柄が自然と言葉として紡ぎ出される)
  • 慌ただしく挙動不審。背中が曲がるなど姿勢が悪く、卑屈な印象。尊大で、聞かれてもいない自慢(仕事の業績など)ばかり語る。夫婦の冷え切った空気。子や妻(夫)の返答に対し、引き攣った笑顔やこめかみに青筋を立てる。返答に詰まる。
応答内容
  • 回答の内容に家庭の軸がある
  • 学校、教育活動への深い理解がある
  • 建学の精神・理念と親和的な価値観を備えている
  • ミッションスクールであればキリスト教精神への理解がある
  • 言っていることが支離滅裂、夫婦間での整合性がない。どこかで聞いたことのあるような言葉、借りてきた言葉。その学校のことを何も知らない。自分達の考えが先に立ってしまっている。全く異なる価値観を頑なに崩さず、学校に寄せていく様子が見えない。宗教観が全くなく、ミッションスクールを志願する理由が不明。(*宗教観≠信仰心)

どれだけ社会、経済界でご立派であったとしても、あくまで一つの学校に入学を願い出る立場として、謙虚に学ぼうとする姿勢が見えなければ、学校からは受け入れを拒まれます。「支払う費用の対価として教育サービスを享受する」というような消費者意識、学校側にコスパの良い役務提供を期待するような姿勢はすぐに見透かされます。

学校や先生方への敬意を払い、同時に家庭としてのあり方や教育観を明確にして、明るく爽やかに考えをはきはきと述べることを通じて、学校への協力を惜しまず共に歩む姿勢を示していただきたいと存じます。

受験対策という狭い枠組みで事前に取り繕ったご家庭像ではなく子どもの健やかな成長を願う親の真摯な態度、そして学校と共に歩ませていただこうとする謙虚な姿勢の発露として、面接に対しても前向きに臨む心構えを備えていただきたいと願っております。

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執筆
小学校受験コース 主任講師 松下健太

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