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【コラム】母子分離が他者への信頼を育む

今回のコラムでは、慶楓会にて絵画造形クラスの主任を務め、年少コースと年長コースの絵画造形クラスならびに乳幼児絵画クラスにてご指導をいただいております森住香先生に寄稿していただきました。

もくじ

私自身の母子分離体験

先日の乳幼児絵画クラスで、保護者の方から母子分離についての不安を伺いました。アドバイスを差し上げながら、私自身の母子分離の体験についても自然と脳裏に思い起こされました。

最初の育児での、初めての母子分離は二歳になる数ヶ月前だったと記憶しています。娘を連れ、我が家の近隣にあるモンテッソーリの子どもの家を訪れると、彼女は目の前にある教具に興味を示し、先生に誘われてお洗濯を始めました。私は先生から、一時間後に迎えに来るようにと言われて、そっとその場を離れたのでした。この時、娘はお洗濯に意識を集中しており、私の方を見向きもしませんでした。とても驚きました。お迎えの際に先生に言われたことは、あの後に彼女は三十分もお洗濯をしていたこと。お漏らしをしても泣かずにお着替えをし、また違うお仕事をしたことです。そういうわけで、最初の母子分離で不安になり寂しくなり悲しくなったのは、子どもではなく親である私の方でした。

母子分離は段階的に

慶楓会の教室で、保護者の方から「何歳くらいから母子分離ができますか?」と質問をいただくことがございます。そのような際には、最初の母子分離は一歳半から二歳くらいが良いでしょうとお答えしています。個人差はありますが、歩行ができるようになり行動範囲が広がる自立の時期に、子どもの中には「私」という小さな核ができるように感じるのです。これくらいの時期について、実際に書籍で調べてみるとモンテッソーリはこう言っています。「生理学的には上股下肢の準備をする調整の時期であり、心理学的には子どもが完全な人間へとそのベールを脱ぐ、まさにその前夜である」と。子どもたちは自分の手と足を使い活発に動き始めます。

「母子分離は必要ですか?」という問いも受けます。「いないいないばあ!」をして遊ぶことは乳幼児のとても好きなことですね。ほんの一瞬ですがお顔が隠れて見えなくなり、そしてその後見えるようになる。顔が見えないという小さな不安はその後の「ばあ!」と出てくる顔によって安心に変わります。この遊びは「母親が側に居ないことがあっても、必ず戻ってきてくれる」というその後の母子分離の暗示なのだと教えてもらったときには、とても面白いなと思ったものです。乳幼児期の母子分離は何度も繰り返される別れと再会によって次第に不安が少なくなります。急に長時間離れることはお互いにとって難しいことですから最初は短時間から始めるのが望ましいでしょう。

他者への信頼を育む大切な機会

家族以外の周りの人との出会いや信頼は子どもの成長に欠かせないものです。私たちは多くの人との出会いに支えられて日々を過ごしているのです。小さな子どもを預けることは母子にとって他者への信頼を育む大切な機会でもあります。母子分離の後に、お預けした先生など幼児教育に携わる方から見た我が子についての感想や出来事を聞くことは、普段の親子関係の中では見過ごしていた発見や喜びを与えてくれます。

母子分離に不安を抱えている保護者の方は、是非一度お教室にいらしてください。お子さんが本来持っている力を発揮し、目の前の事柄に集中して取り組む姿を目の当たりにすることで、これまでのご心配がきっと晴れることと存じます。お子さんの現状をご一緒に見取り、自立に向けた成長のあり方について、お目にかかってお話をさせていただけることを楽しみにお待ちしております。

執筆
小学校受験コース 絵画造形クラス 主任講師 森住香

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